7月になった。
七夕が近づいていた。
織姫と彦星が年に一度、再会する日。
愛逢月(めであいづき)とも言われる、この月。
そんな月に私は、この町を出ていく。
寂寞の想いが日に日に増して、荷造りも父との連絡も進んでいないどころか、まだ陽乃たちに何も言えていなかった。
半年も一緒にいないのに、もう親友とも呼べるあの4人。
ちゃんと話さなければならないのに、大切だからこそ、言いにくい。
そんなの、言い訳じみた綺麗ごとなのに、私は、日を重ねるごとにそうやって言い聞かせている。
「瑞輝、おはよう」
いつものバス停に行くと、彼女たちは、もう既にそこにいる。
私を待ってくれている。
「みんな、おはよう」
あと、何回、おはようを言えるだろう。
あと、何回、登校できるだろう。
「昨日のドラマ見た ?」
「見たよ。
めっちゃ面白かったよね」
「え、まだ見てないから、なんも言わんで」
「見てないの ?
絶対見て。
マジで、面白いから」
誰一人、置いてけぼりにしない、会話が、私にはもったいない気がする。
そんなに優しくされてしまっては、言いたいことも言えなくなってしまう。
こんなに、優しくされちゃダメなのに。
私には、そんな資格ないのに。
「瑞輝 ?
どうかした ?」
咄嗟に首を振りそうになってしまった。
「みんなに、話がある。
今日の昼休み、話したい」
5人の親友たちは、しばらく驚いた顔をしながら思案していたみたいだけど、誰からともなく、頷いてくれた。
「うん、わかった。
じゃあ、どっか空き教室、集まろう」
郷夏が、そう言ってくれた。
きっと、大事な話だと察して、空き教室と言ってくれたんだろう。
離れたくないな。
「で、話って ?」
昼休み、高くなってきた日が射し込む眩しいほどの教室で、私たちは集まった。
「えっと、実は、私、この町、出ていくになった。
というか、出ていくことにした」
心臓があり得ないほど、早鐘を打っている。
「え ?
出ていくってどういうこと ?」
「引っ越す。
地元に帰ろうと、思ってて」
あそこに帰るかまだ定かではなかったけれど、とりあえずそう言っておいた。
地元に帰ると言っておいた方が、納得してくれそうな気がした。
もう一から色々説明する気力もない。
「来たばっかりなのに ?」
由良が怪訝そうな口調で、そう尋ねてきた。
「うん、ごめん」
思わず、謝罪の言葉が口をつく。
「いや、ごめん。
なんか責めるみたいな言い方して」
気の詰まるような沈黙が漂う。
誰も悪くないのに、申し訳なくなってくるような不思議な時間だった。
「そっか!
じゃあ、残りの時間、楽しまなきゃね」
陽乃が場違いなほど明るい声を出す。
「ありがとう」
「何言ってんの。
親友として当たり前」
いつの間にか、雲がかかっていた太陽が、顔を出す。
教室に、光が満ち溢れる。
七夕が近づいていた。
織姫と彦星が年に一度、再会する日。
愛逢月(めであいづき)とも言われる、この月。
そんな月に私は、この町を出ていく。
寂寞の想いが日に日に増して、荷造りも父との連絡も進んでいないどころか、まだ陽乃たちに何も言えていなかった。
半年も一緒にいないのに、もう親友とも呼べるあの4人。
ちゃんと話さなければならないのに、大切だからこそ、言いにくい。
そんなの、言い訳じみた綺麗ごとなのに、私は、日を重ねるごとにそうやって言い聞かせている。
「瑞輝、おはよう」
いつものバス停に行くと、彼女たちは、もう既にそこにいる。
私を待ってくれている。
「みんな、おはよう」
あと、何回、おはようを言えるだろう。
あと、何回、登校できるだろう。
「昨日のドラマ見た ?」
「見たよ。
めっちゃ面白かったよね」
「え、まだ見てないから、なんも言わんで」
「見てないの ?
絶対見て。
マジで、面白いから」
誰一人、置いてけぼりにしない、会話が、私にはもったいない気がする。
そんなに優しくされてしまっては、言いたいことも言えなくなってしまう。
こんなに、優しくされちゃダメなのに。
私には、そんな資格ないのに。
「瑞輝 ?
どうかした ?」
咄嗟に首を振りそうになってしまった。
「みんなに、話がある。
今日の昼休み、話したい」
5人の親友たちは、しばらく驚いた顔をしながら思案していたみたいだけど、誰からともなく、頷いてくれた。
「うん、わかった。
じゃあ、どっか空き教室、集まろう」
郷夏が、そう言ってくれた。
きっと、大事な話だと察して、空き教室と言ってくれたんだろう。
離れたくないな。
「で、話って ?」
昼休み、高くなってきた日が射し込む眩しいほどの教室で、私たちは集まった。
「えっと、実は、私、この町、出ていくになった。
というか、出ていくことにした」
心臓があり得ないほど、早鐘を打っている。
「え ?
出ていくってどういうこと ?」
「引っ越す。
地元に帰ろうと、思ってて」
あそこに帰るかまだ定かではなかったけれど、とりあえずそう言っておいた。
地元に帰ると言っておいた方が、納得してくれそうな気がした。
もう一から色々説明する気力もない。
「来たばっかりなのに ?」
由良が怪訝そうな口調で、そう尋ねてきた。
「うん、ごめん」
思わず、謝罪の言葉が口をつく。
「いや、ごめん。
なんか責めるみたいな言い方して」
気の詰まるような沈黙が漂う。
誰も悪くないのに、申し訳なくなってくるような不思議な時間だった。
「そっか!
じゃあ、残りの時間、楽しまなきゃね」
陽乃が場違いなほど明るい声を出す。
「ありがとう」
「何言ってんの。
親友として当たり前」
いつの間にか、雲がかかっていた太陽が、顔を出す。
教室に、光が満ち溢れる。
