「今日はちゃんと帰ろうね」

 海沿いを歩きながら、冗談交じりにそう言った。

 『そうだね』

 ちょうど日の入りが近くなってきた時刻で、海の向こうは橙色に染まっている。

 「ずっとこうしていられたらいいのにね」

 つい、本音が漏れてしまう。

 南東の方に、沖合漁業をしている船か、小さな船が浮かんでいる。

 『そうだね』

 「なんで、私たちが思ってることは叶わないんだろうね。
 私たちが願ったことは全部ずっと叶わないままだよ」

 こんな辛くなること言ったら、もっともっと辛くなるってわかってるのに言ってしまう。

 『そんなことないよ』

 想來くんが立ち止まった。

 気づかず少し歩いてから振り返って私も立ち止まった。

 「え ?」

 『僕が願ったことは、ひとつ叶った』

 「そうなの ?」

 『うん
 君にまた会いたいって、思ってた
 まさかこんなに早く会えるとは思っていなかったけど、会えたよ』

 想來くんの顔が、悲しそうに、少し歪んだ。

 西陽で目が煌めいて、場違いにも、綺麗だなんて思ってしまう。

 『僕は、幸せになれたよ』

 「なんかずるいなあ。
 想來くんだけいいこと言ってさ。
 私だって、想來くんにずっと会いたかったよ。
 私だって、今、超超幸せだし」

 『僕は超超超幸せ』

 「私は超超超幸せ」

 『変わってないって』

 「え ?
 超超超超超か」

 『1個増えた』

 あの頃みたいな無邪気な笑い声が、空に響く。

 決して幸せじゃないのに、自分の方が幸せだと競い合う二人を、神様はどう見ているだろう。

 全然普通じゃないのに、普通の青春をしようとする二人を、神様はどう見ているだろう。

 神様、そろそろ意地悪やめてくれるかな。