エンドロール

 「ん、おいしい。
 想來くん、これめっちゃおいしいよ。
 想來くんも食べなよ」

 向かい側に座っている涼風さんが興奮した声をあげる。

 お言葉に甘えて僕も一口食べてみると、本当に声が出そうになった。

 声は出ないけれど、出さないけれど、きっとそろそろ出せる予感がしている。
 涼風さんのおかげでもう少しで話せる予感がする。

 『おいしい』

 「でしょ ?」

 まるで自分が作ったかのように目をキラキラさせてそう言う涼風さんは可愛らしい。

 だらしなく口角が上がって、目尻を垂れさせる。

 「ほら、もっと食べなよ」

 駅前の人気店は、混んでいて、ざわざわとしている。

 僕はこういうところは苦手だし、値段も高くて、断ろうとしたけれど、勢いで連れてこられてしまった。

 でも、涼風さんの楽しそうな顔を見るのは悪くなかった。
 じっと見つめてしまう。

 「想來くん、食欲ない ?」

 あまり手をつけずにいると涼風さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。

 『うん
 まだお昼ご飯がお腹に残っていて』

 「そっか、そうだよね。
 ごめん、無理やり誘っちゃって」

 涼風さんがすごく申し訳なさそうな顔をするものだから、こっちもなんだか申し訳なくなってくる。

 『いや、全然無理やりではないよ
 僕もこういうのやってみたかったから
 放課後に喫茶店寄ったりするの』

 「そう ?
 ならよかった」

 涼風さんの顔が笑顔に戻る。

 『可愛い』

 そう送りそうになって、慌てて打ち消した。