高校生になったら青春ができる。
 高校三年間が最高の青春。

 そう思って生きてきたのに、全くそんなことなかった。
 バイトはしなくちゃならないし、PTSDに苦しむこともある。
 誰にも話せない、話したくないことを隠しながら、生きてる。

 私は、普通に生きられない人生なのだろうか。

 みんなが当たり前にできることをできないまま、終わるのだろうか。

 そんなの嫌だ。
 普通に生きたい。
 青春がしたい。

 キラキラな青春じゃなくていい。
 心の奥底にひっそりと残しておけるような小さな青春でいい。

 「私たち、青春しよう。
 普通に、青春しよう」

 窓から射し込む陽光に照らされた想來くんの目を見つめた。
 少し茶色に透き通った綺麗な目は何度か瞬きを繰り返す。

 「学校帰りに駅前寄って、カフェ行こう。
 プリクラ撮ろう。
 休みの日は、映画見に行こう。
 来月は夏祭りに行こう。

 みんなが普通にしてること、私たちも普通にしよう」

 『うん、したい』

 しばらくして想來くんが頷いた。

 最後の高校生活、私は、想來くんと過ごしたい。

 決して叶うことのない約束を交わした彼だから。
 ずっと、叶えたかったことだから。