ひよりの膝が、崩れそうだった。
足に力が入らない。
全身が震えていて、自分が今ここに立っているのが不思議だった。
「大丈夫?……ちょっと、こっち。席、空いたから」
彼は、混雑が少しだけゆるんだ隙に、そっとひよりを座席へ導いてくれた。
目の前に差し出されたのは、ミニサイズのペットボトル。
「さっき買ったばかり。まだ開けてないから……のむ?」
差し出されたその手が、ほんの少しだけひよりの指に触れる。
冷たくなっていた指先に、やさしい体温が伝わってきた。
「……あのときも、水……だったね」
かすれた声でそう言うと、彼の目がふっと驚いたように見開かれた。
「……やっぱり。入学式の日の子……?」
その言葉だけで、ひよりの胸に、ぽっと灯りがともった気がした。
「覚えててくれたんですか……?」
「うん。印象的だったから。
……ちょっと、緊張してたよね?」
彼がふっと笑う。
その笑顔は、今朝の陽ざしよりずっと、あたたかかった。
震えていた心が、少しずつほぐれていく。 迷っていた気持ちが、自然に言葉になった。
「大丈夫?……ちょっと、こっち。席、空いたから」
彼は、混雑が少しだけゆるんだ隙に、そっとひよりを座席へ導いてくれた。
目の前に差し出されたのは、ミニサイズのペットボトル。
「さっき買ったばかり。まだ開けてないから……のむ?」
差し出されたその手が、ほんの少しだけひよりの指に触れる。
冷たくなっていた指先に、やさしい体温が伝わってきた。
「……あのときも、水……だったね」
かすれた声でそう言うと、彼の目がふっと驚いたように見開かれた。
「……やっぱり。入学式の日の子……?」
その言葉だけで、ひよりの胸に、ぽっと灯りがともった気がした。
「覚えててくれたんですか……?」
「うん。印象的だったから。
……ちょっと、緊張してたよね?」
彼がふっと笑う。
その笑顔は、今朝の陽ざしよりずっと、あたたかかった。
震えていた心が、少しずつほぐれていく。 迷っていた気持ちが、自然に言葉になった。

