きみのとなりは春のにおい

放課後の電車内。



偶然、帰る時間が重なった宙とひよりは、いつものようにドア横のスペースに並んで立っていた。



「最近どう? 学園祭の準備…忙しい?」


 
ひよりの問いに、宙はほんの少し照れたように笑って、視線を落とす。


「うん。教室の飾りつけとか、立て看板のデザインとか……いろいろバタバタしてる。でも、楽しいよ」


「へえ……宙くんのクラスって、何やるの?」


「雑貨屋カフェ。ケーキとかお菓子も出すし、手作り雑貨のブースもあるんだって」


 
宙の声は、いつもよりちょっとやわらかくて、うれしそうだった。


 
ひよりは微笑みながら、頷く。


 
だけど、ほんの少し――胸の奥が、きゅっとなった。


(宙くんは、学校のみんなと一緒に、楽しそうに準備してて……笑って、作業して、毎日をちゃんと過ごしてるんだ)


 
そう思った瞬間、足元が少し遠くなった気がした。


 
すぐ隣にいるはずなのに、見えない距離がある気がして。