きみのとなりは春のにおい


 
別れ際、宙がもう一度、ふっと笑うように言った。


「じゃあね、ひより」


 
その言葉があまりにも自然で、でもどこか特別で。


 

ひよりは立ち止まりかけた足を急いで戻して、「……うん、またね」と小さく返した。


──名前を呼ばれるたびに、胸の奥があたたかくなる。



そんな不思議な感覚が、ずっと心の中で残っていた。