きみのとなりは春のにおい

ふたり並んで歩く帰り道。ビルのすき間から差し込む夕陽が、足元に長い影を落とす。


「ここが例の図書カフェ?」


 
宙が指差した先には、木の看板とガラス張りのあたたかな光。

 

中をのぞくと、優しい色の本棚が並び、静かな空気が流れている。


「うん……素敵」


 
中へ入ると、窓際の席に通された。
 淡く沈む夕空が、ガラス越しに広がっている。


「読みたい本、ある?」


「まだ決めてない……一緒に選びたいなって」

「じゃあ、いくつか俺のおすすめも探してみるね」


 
本棚の前に並んで立つ。指先がふと重なりそうになって、ふたりともそっと間を空けた。


「この作家さん、好きなんだ」


「え、ほんと? わたしもこのシリーズ、読んでみたかった」


 
そんな小さな“好き”が重なるたびに、距離がじんわり近づいていく。