きみのとなりは春のにおい

放課後、空は淡いオレンジ色に染まりはじめていた。




制服のまま、ひよりは駅へと急ぐ。


 
──宙くんと、図書カフェ。


 
鏡の前でほんの少しだけ手直しした髪。お気に入りのリボンも、今日は少しだけ丁寧に結んだ。


制服姿でも、ちょっとだけ“特別”な自分でいたくて。


 
改札の近くで待っていた宙が、ひよりに気づいて手を振る。


「桜庭さん、おつかれ。……なんか、今日ちょっと雰囲気違うね」


「え、そ、そうかな……?」


「リボン、いつもとちがう。かわいい」


 
ふいの言葉に、心臓が跳ねる。


 

「あ、ありがとう……」と小さくつぶやいて、顔が熱くなるのを隠すように前を向いた。