きみのとなりは春のにおい

でもその目は、どこか安心するような温かさを宿していた。


「あ、おはよう、宙くん……!」


自然と隣に並び、並んでつり革を握る。


いつもと変わらない距離感──のはずなのに、今日は心の奥で、小さな火がぱちぱちとはぜていた。


(……今、言わなきゃ)


ひよりはバッグからスマホを取り出し、画面をそっと開く。
まゆたちが教えてくれた“図書カフェ”のサイト。


静かな空間とスイーツの写真が並んだページを、そっと宙のほうへ向けた。


「あのね……ちょっと、聞いてほしいことがあって」

「ん?」


宙の視線がスマホへ、そしてひよりへと向けられる。


「友達が教えてくれたんだけど、駅の近くに“図書カフェ”っていうお店があるの。
静かで、読書もできて……スイーツもすごくおいしそうで。
写真だけでも、雰囲気よさそうだなって思って……」


肩が少し触れるほどに近づいた距離。


画面越しに伝わる店内のあたたかな照明、本棚、そして窓辺の陽だまり。


ひよりの声が、緊張で少しずつ熱を帯びていく。


「よかったら……今度、一緒に行かない?」


一瞬の沈黙。


宙は写真を見つめたまま、ふっと目元をゆるめた。