きみのとなりは春のにおい

けれどやっぱり嬉しくて、

「うん、行きたい……! また、どこか一緒に」


声が少し震えても、ちゃんと届いている気がした。宙は満足そうに微笑んだ。


「じゃあ次は、桜庭さんのおすすめ、楽しみにしてる。スイーツでも、なんでもいいからさ」


「……えっと、じゃあ……考えておくね」


少し照れて俯いたひよりに宙が小さく「うん」と応えた。


二人の視線がふと合い、頬がうっすら赤くなる。恥ずかしさに目をそらしそうになったけれど、確かな温もりが胸を満たす。


(言えなかったけど、伝わった……そんな気がする)


手は触れていないのに、歩幅は自然に合っていく。いつもの駅までの道が、今日だけは特別に輝いて見えた。