きみのとなりは春のにおい

そのとき、宙がふと足を止めて振り返る。


「桜庭さん」


不意打ちの声にひよりも立ち止まった。


「今日、来てくれてありがとう。俺、あの店ずっと気になってたけど、一人じゃ入れなかったし」


「ううん、私こそ誘ってもらえて嬉しかったよ。ほんと、楽しかった……」


「うん。……でさ」




「———また今度、どこか行こうよ。次は、桜庭さんの行きたい場所でもいいし」


その言葉がまっすぐに胸に届く。


「……えっ?」


言いたかった言葉を先に言われて、嬉しさと少し悔しい気持ちが混じる。