きみのとなりは春のにおい

「し、写真撮るの忘れてた……!」

「たしかに。お互い、夢中だったもんね」

「せっかくかわいいタルトだったのに……ちゃんと、記念に残したかったのに……」



そう言いながら、ひよりは肩を落とす。


お会計を済ませて、店を出た後。


「ごめん、宙くん。ちょっとだけ待っててもらっていい?」


と、言った後スマホを取り出して、
入口近くにあった大きなパネルの前でしゃがみこんで、角度を確かめる。


一枚、二枚──真剣な表情で、撮る。
そんなひよりの横顔を、宙はすぐそばで静かに見つめていた。


(……かわいいな)


──もう食べ終わったスイーツの、看板だけでも撮っておきたいって思える気持ち。



そのまっすぐさも、どこか照れた仕草も。



全部が彼の中で、じわっと特別になっていく。