きみのとなりは春のにおい



窓から差し込む光と、紅茶の甘い香りの余韻が、テーブルの上にゆるやかに残っていた。


空になったお皿とカップ。


名残惜しそうに、ひよりはタルトの皿を見つめる。


「ごちそうさまでした……ほんと、おいしかった」

「そっちも当たりだった?」

「うん、最高だった。でも……」

ふいに、小さく声を上げた。


「──あっ」


驚いて顔を上げた宙の前で、ひよりは両手にスマホを握りしめていた。