きみのとなりは春のにおい

隣の席の女子たち、斜め向かいの二人組、カウンターの奥にいる店員さんまで。


誰もがさりげなく、でも確実に、宙くんの方を気にしていた。


(……気のせいじゃない)


その理由は、言うまでもなかった。


整った顔立ち、静かで落ち着いた雰囲気、制服の着こなしまで絵になる彼は、どこにいても目を引く。


(……やっぱり、かっこいいんだ)


優しくて、さりげない気遣いができて。


笑ったときの表情なんて、反則みたいに魅力的で。


そんな彼と、今こうして向かい合って座っていることが、少しだけ信じられなかった。


(……わたしなんかが、隣にいてもいいのかな)


手の中のタルトが、さっきより甘さを感じなくなっていた。