きみのとなりは春のにおい

チャイムが鳴り、授業が終わる。



教科書を閉じる手と一緒に、スマホをそっと開いた。


緊張で、震える手で文字を打つ。


──「あの……改めて、助けてくれたお礼がしたくて。何かできることないかな?」



送信してから数分後、画面に通知が届いた。


【藤宮宙】
「じゃあ、今日放課後、空いてる?ちょっと付き合ってほしい場所あるんだけど。いい?」


──心臓が、また跳ねた。


うれしさと、どきどきと、不安が混じる中で、「行きたいです!」とすぐに返信する。


でも心の中では、(どこに連れて行ってくれるんだろう)と、小さな冒険に出る前のような期待感でいっぱいだった。