きみのとなりは春のにおい



桜庭ひより
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私のほうこそ、朝寝坊しちゃってすごく焦ってたけど……
宙くんの顔を見て、ちょっと安心したよ。
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すぐに返ってくる、まっすぐな言葉。


藤宮宙

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俺も、桜庭さんに会えるとなんか今日も頑張ろうって思える。

明日も……同じ電車、乗れそう?
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“同じ電車”――その言葉が、なぜか胸の奥で特別な意味を持った。



桜庭ひより
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うん、ちゃんと早起きして間に合うようにする。
次はちゃんと髪も整えてくるね。

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藤宮宙
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そっか(笑)

じゃあ、また明日ね。
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画面を見つめたまま、ひよりはそっとスマホを胸に抱きしめた。
声じゃないのに、やさしい音が響いたような気がした。

(……今日も、明日も頑張れそう)


まぶたを閉じると、静かなぬくもりが胸いっぱいに広がっていく。

ほんの少しの勇気がくれた、このやり取り。


きっと、ここから始まる――ふたりだけの、特別な朝。