きみのとなりは春のにおい



「……ありがとう。宙くん」


そう言って笑う彼女が、思った以上にまっすぐで。

…かわいかった。


「うん」


思わず、顔をそらす。
なんでか、顔を見て言えなかった。


“気になる”って、こういう気持ちなんだろうな、って最近になって思い始めている。

まだ「好き」って言えるほどじゃないかもしれない。

だけど、もしこの先も彼女と話せるなら――

もっと知りたいって思っている。

電車が駅に近づいて、ゆっくり減速していく。

流れる景色の中で、隣にいる彼女の横顔を、そっともう一度見つめた。

(……明日も、また会えたらいいな)

そんなふうに思える朝が、少しずつ増えていくのが、
今の自分にはすごく心地よかった。