きみのとなりは春のにおい

「寝癖。いつもより、ちょっと“素”って感じ。……俺は、けっこう好きかも」

「っ……!」


胸の奥がじんわり温かくなる。
その一言だけで、ひよりの心臓は跳ね上がった。

(やっぱり、好き)


隠しきれない想いが、胸の中で溢れそうになる。

電車が揺れた拍子に、ひよりの肩が彼の腕にほんの少し触れた。
慌てて身体を引き戻し、声が震える。

「ご、ごめんなさい!」

「大丈夫。……つかまってていいよ」

宙の声はあたたかく、優しかった。

勇気を振り絞って、ひよりは言葉を絞り出した。