前世を思い出した瞬間、超絶好みの騎士様から求婚されましたが、とりあえず頷いてもいいかしら?

 莉子自身はわりとモテる方で、彼氏が途切れることはあまりなかった。
 結婚は三十くらいでしたいと思ってたし、多分したんじゃないかなぁと思うけれど、自分のことはさっぱり思い出せない。

(たしか、真央の結婚式のあたりはちょうどフリーだったんだよね)

 ふとそんなことを思い出す。
 披露宴や二次会で同じくフリーだった他の友人たちと、良い出会いでもないかななんて、冗談半分言っていたのだっけ。

(そうね。いい出会いないかなぁ)

 この世界でのクラリスは適齢期だ。

 家族との折り合いが悪くても、異母妹ばかりが可愛がられて大きな舞踏会が開かれていようと、正直なところ特に不満はない。だって、集まる人達にまったく興味がないから。

 チラッと領主の館に目を向け、そこで開かれている舞踏会を想像して肩をすくめる。

(私、生まれ変わっても好みが変わってないんだなぁ)

 大勢集まっているであろう令息たちは、ほぼ間違いなく、流行りのほっそりした男性ばかりだろう。フリルのついたドレスシャツを着て、長い髪をリボンで束ねてるのだ。もしかしたら、うっすらメイクもしてるかも。

(うん、全然お呼びじゃない)

 去年クラリスの社交界デビューがなかったのは、天災とはやり病で世間がごたついていたからというのが建前だ。継母と妹はニヤニヤ笑うのを隠せていなかったけど、クラリスとしては内心ラッキーくらいの気持ちだった。

(碌なドレスも作ってもらえないで、好みでもない男性の前に出て恥をかくとか、なんの罰ゲームだってのよね?)

 いずれ嫁がねばならないのは分かってる。莉子の世界のように、女一人で生きるのは厳しい世界だから。
 でもせっかくなら、好みの男に嫁ぐくらいの夢は見たい。