至上最幸の恋

 食事を終えたあとは、磯崎さんがホテルの部屋の前まで送ってくださった。

 その前には黒瀬さんの部屋にも立ち寄り、無事に帰ったことをきちんと報告している。あまりに丁寧な対応に、黒瀬さんは恐縮しきりだった。

 磯崎さんには、欠点なんてないんじゃないかしら。そんなことまで思ってしまう。

 こんな素晴らしい方と一緒にお仕事ができるなんて、とても幸せだわ。
 そのことをしっかり噛みしめながら、翌日からの撮影に臨んだ。

 初めて出す写真集は、「少女から大人へ」をテーマにしている。

 最初のページに写るのは、ウィーンに来たばかりで、不安に包まれていた私。ページをめくるたびに、少しずつ大人へ近づいていく姿を表現する。
 
「ウィーンに着いたとき、どんなふうに感じた?」
「そうですね……期待と不安が、半々でした」

 あのころの気持ちをひとつずつ紐解くために、磯崎さんと会話をしながら撮影を進める。

 シャッターを切るタイミングは、完全にお任せ。街を歩いたりベンチに座ったりしながら、自然な表情を撮っていただく。

 磯崎さんが上手に話を引き出してくださるから、自然と言葉が出てくる。

「それで、私だけが課題曲を思うように弾けなくて……悔しくて、情けなくて、泣きそうになりながらこの公園を歩いていました。そこで……」
 
 言葉を切った私を、磯崎さんがじっと見つめる。