至上最幸の恋

 空いていた窓際の席へ座ると、磯崎さんがふうと小さく息をついた。やっぱり長時間移動でお疲れなのかしら。

「お体、大丈夫ですか?」
「あ、ごめん。おじさんっぽかったね」
「そんな。磯崎さんは、とてもお若いですわ」
「もう32だよ。若いと言い切るには、少し気が引けるなぁ」

 謙遜されるけれど、おじさんという言葉はまったく似合わない。大人の落ち着きと若々しさ、どちらも持ち合わせていらっしゃるもの。

「うーん。ドイツ語は、なんとなくしか分からないんだよね」

 ほとんどドイツ語で書かれているメニューを開いて、磯崎さんが首を捻る。

「これは……ウィーナー・シュニッツェルか」
「はい。オーストリアを代表するお料理ですね」

 ウィーナー・シュニッツェルは、薄く叩いた仔牛肉に衣をつけて、たっぷりのバターやラードで揚げ焼きにしたお料理。カツレツのようなもので、レモンを絞ってさっぱりといただくから、クセになってしまうのよね。

「あぁでも、エリサちゃんは食事に気をつけているんだよね?」
「お気になさらないでください。オーストリアの伝統料理を味わっていただきたくて、このお店を選びましたから」

 写真集撮影に向けて、ここ数か月はかなり体づくりをしてきた。でもこのお店には比較的ヘルシーなお料理もあるから、問題ないはず。それに、今夜くらいは少し味わってもいいわよね。