至上最幸の恋

 ラントシュトラーセ大通りは、相変わらず多くの人で賑わっている。石畳の道に、重厚な建物が並ぶ。クラシカルで落ち着く街並みは、まったく変わっていない。

 ふと、落ち着いた佇まいのレストランが目に入る。留学中にお世話になっていたガーディアンの方が連れてきてくださったところだわ。

 そうだわ。あのお店にしましょう。本格的なオーストリア料理をいただけるし、きっと磯崎さんも気に入ってくださるんじゃないかしら。
 
「磯崎さん。あちらのお店はいかがでしょうか?」
「落ち着いた雰囲気だね。そこにしようか」

 よかった。ここならホテルのすぐ近くだから、遅くならずに帰れるわね。

 磯崎さんが自然に前へ出て、お店のドアを開けてくださった。こういうところも、紳士的だわ。

 店内へ入ると、壁にずらりと並ぶワインボトルが目に入った。

 そういえばあのころは、大人になったらワインをたしなむ素敵な女性になりたいと思っていたわね。残念ながら、そうはならなかったけれど。

「すごいワインの数だね」
「ええ。ワイン好きの方は、迷ってしまうかもしれませんよね」
「僕もお酒が飲めたら、食事の楽しみがもう少し増えていたのかなぁ」

 残念そうに仰る姿が、なんだかかわいらしい。
 磯崎さんこそ、ワインが似合う大人の男性に見えるのに。