至上最幸の恋

「あ、もちろん、黒瀬君にはちゃんと声をかけるからね」
 
 私が迷っていると感じたのか、磯崎さんがそうつけ加えた。
 でも、そうよね。心配をかけてはいけないし、黒瀬さんにはお伝えしておかないと。

「それでは、ぜひご一緒させてください」
「ありがとう。えっと、黒瀬君の部屋はどこだっけ」
「私と同じ7階です。ご案内しますね」

 磯崎さんと一緒に、エレベーターで7階へ戻る。
 週刊誌の記者さんも、さすがにここまでは追いかけて来ていないでしょうし。黒瀬さんも、分かってくださるわよね。

 少し不安を感じながら、黒瀬さんの部屋のドアをノックした。

「いいですよ」

 ……あら? あっさり許可してくださったわ。
 
「ただ、明日は朝から撮影なので、遅くならないようにしてくださいね」
「大丈夫ですよ。僕が一緒なので」
「そうですね、それなら安心です」

 そう言って、黒瀬さんが微笑んだ。

 日本にいる間はピリピリしていることが多かったけれど……もしかすると、事務所との板挟みになっているのかもしれない。
 海外で少し息抜きできるのは、私だけじゃないのね。

 私もしっかりしなくちゃ。黒瀬さんに、余計な気遣いをさせてはいけないわ。
 
「黒瀬さん。私、撮影頑張りますね」
「どうしたんですか、急に」
「いま、頑張りたいと思ったので!」

 両手を強く握りしめて言うと、隣で磯崎さんが小さく吹き出した。