至上最幸の恋

 磯崎さんが誠実な方だというのは、黒瀬さんも分かっている。ただ、相手が誰であっても、恋愛報道につながるような行動は避けなければいけないのよね。

 最近は私もメディアに出る機会が増えたから、気をつけてはいるけれど……ときどき、息苦しさも感じる。モデルである前に、ひとりの人間だもの。

 だけど海外での撮影は、ゆっくり呼吸ができそう。しかも大好きなウィーンだもの。大切な思い出が眠る場所。
 このタイミングで行くことになるなんて、きっと私にとって大きな意味があるのだと思う。

 そんな期待と、少しのざわめきを抱いて、日本を発った。

 長いフライトを経て、ウィーン国際空港へ降り立つ。行き交う人の中に、17歳の自分が見えた気がした。
 あのときも不安と高揚で胸がいっぱいだったわね。私、少しは成長できたかしら。

「エリサさんって、こっちでうちの社長にスカウトされたんですよね?」

 ホテルへ向かう車の中で、黒瀬さんが尋ねてきた。

「はい。社長に道を尋ねられたんですけど、たまたま同じカフェへ行こうとしていたんです」

 社長はそのとき、結婚20年を記念して、奥さまとご旅行中だった。
 奥さまに美味しいザッハトルテを食べさせてあげたいという社長の言葉が、とても温かくて。つい話が弾んでしまったのよね。