至上最幸の恋

「それじゃ、明日は10時に迎えに来ますね」
「ありがとうございます」

 車から降りたとき、足元がふらついた。今日は長時間の撮影だったし、疲れが出たのかしら。

 黒瀬さんは、いつも私が玄関に入るまで待っていてくれる。心配をかけないよう、なにごともなかったかのように玄関へ向かった。

「おやすみなさい、エリサさん」
「はい。黒瀬さんも、ゆっくりお休みくださいね」

 もう両親は寝ている時間だから、そっと玄関に入る。
 ドア越しに車が去っていく音が聞こえたあと、急に体が重くなったように感じた。

 年末からずっと、怒涛のスケジュールが続いている。
 全国ツアーに向けた練習、雑誌の撮影、そして写真集の打ち合わせ。まったく休みがない中でも、体調だけは崩すわけにはいかない。

 だけど、自分で選んだ道だもの。弱音をこぼしている場合ではないわ。
 
 それに撮影は磯崎さんとご一緒することが多いから、とてもリラックスできる。いつも私を気遣ってくださるし、レンズの前に立っていても、不思議と心が落ち着くもの。

 初めて出す写真集も、磯崎さんに撮っていただくことになっている。
 撮影場所は、ウィーン。私の原点とも言える場所。

 どうしても瑛士さんの顔が浮かんでしまうけれど、プロとしてしっかり撮影に集中しなくちゃ。