至上最幸の恋

 オレにできることと言ったら、絵を描くことだけだ。もっと鎌倉の絵を描いて、多くの人に、その魅力を知ってもらうしかない。

 やはり、鎌倉にアトリエを構えよう。いますぐは無理だが、父とも相談して、少しずつ準備をしていかなければ。

 そんな決意を胸に、父宛の絵ハガキを描いた。
 うっすらと雪化粧をした、白糸の滝。その美しさができるだけ再現できるよう、色鉛筆で丁寧に着色していく。

 父のために絵を描くなんて、子どものとき以来だな。
 なんとなくむず痒い気持ちになりながら仕上げた絵ハガキを、翌日投函した。

 それから、糸島には1週間も滞在してしまった。
 長居するのは申し訳ないと思っていたものの、時間が許す限りいてほしいと、信さんから頼まれたからだ。

 本当は九州を1周くらいするつもりだったのに、1か所に留まることになるとはな。しかしこの旅で得たものは、予定通り九州を周っていたとしても得られなかった気がする。
 
 滞在中、父には3枚の絵ハガキを送った。最初のハガキが到着するころに電話をすると、思いのほか喜んでいた。

「ハガキ、届いたよ」
「そうか、よかった」
「いい絵だな」
「まだ簡単なものだけど」
「いや、いい絵だ」

 短いやり取りだったが、父の声はいつもより少し明るい。それだけで、ハガキを出してよかったと思えた。