至上最幸の恋

 この日は、白糸の滝を見に行った。長谷川家から車で30分ほどの場所にある、福岡県指定の名勝だ。

 白糸と名のついた滝は全国各地にある。その名の通り、落ちてくる水が細く美しい白い糸のように見えることから、そう呼ばれるのだろう。

 長野や静岡で見た滝も美しかったが、糸島の白糸の滝もまた、上品で繊細な雰囲気があって創作意欲をかき立てられる。

 やはり真冬だと、観光客はほとんどいない。水の流れる音や小鳥のさえずりが、耳に心地よかった。

「すげぇ。ここに雪が積もっとるの、初めて見た」

 拓也君が声をあげる。

 糸島はほとんど雪が積もらないらしいが、昨夜、静かに降り続いた雪が、山に薄化粧をほどこしていた。
 地元の人間でも珍しがる景色に出会えるとは。撮った写真は焼き増しして、後日長谷川家へ送ることにしよう。

 そのあとは、拓也君おすすめの海鮮丼を食べた。やはり玄界灘の荒波に揉まれた魚は絶品だ。しかも、東京とは比べものにならないほど安い。

「糸島は、いい街だな」
「そうやろ? 海と山が近くて、天神とか博多にもすぐ行けるけん。この街に生まれて幸せやなぁって、いつも思っとるっちゃん」

 拓也君の笑顔から、地元への強い思いが伝わってくる。大切な場所に貢献したいという彼の姿を見て、自分のふるさとのことを考えた。
 鎌倉の景色が、オレの感性を磨いてくれた。その恩を返すには、どうしたらいいのだろう。