至上最幸の恋

「なにも親孝行できないまま、母を亡くしてしまって……幸せだったという言葉は、父やオレのための強がりだったんだろうと思います」
「私は、そげん思わんよ」

 目元を拭いながら、睦美さんが優しく微笑んだ。

「もちろん、瑛士君が大きくなっていくところを見られん寂しさはあったやろうけど。自分を大切に思ってくれる夫と子どもがいるだけで、幸せやったっちゃない?」
「そう……ですかね」
「母親っていうのは、そげなもんよ。それに亡くなったあとでも、親孝行はできると思うとよ。いつも心の中で想って感謝するだけでも、親孝行よ」

 睦美さんの横で、信さんが無言でうなずいている。

 そういう発想はなかったな。親孝行というものは、生きている間にするものだとばかり考えていた。
 
 いつも心の中で想って感謝する、か。これまでは後悔ばかりを抱えていたが、睦美さんの言葉で、少し救われた気持ちになった。

「それと、瑛士君が幸せに生きること。それが一番の親孝行やけん。ねぇ、お父さん」
「そうたい。親っちゅーもんは、あれこれしてもらうことを望んどるわけやないぞ。子どもが生き生きしとったら、それだけでよかたい」

 ふたりの言葉が、心に染み込んでいく。
 こんな人たちと出会えたオレは、なんて幸運なのだろう。そう思いたくなるほど、向けられるまなざしは温かかった。