「オレはともかく、父は苦労したと思います。製薬会社に勤めていて、かなり多忙だったようですが、男手ひとつで育ててくれました」
オレの言葉に頷きながら、睦美さんが信さんの隣に座った。
「それじゃあ、瑛士君が家事をしよったと?」
いつの間にか睦美さんも「瑛士君」呼びになっている。ちなみに、拓也君もだ。そのほうがしっくりくるし、不思議と悪い気はしなかった。
「そうですね。オレも洗濯機の使い方すら知らなかったので、最初はひどいありさまでしたよ。洗剤を入れすぎて、すすぎをしたのに泡だらけで」
「ははは! そりゃ大惨事だなぁ」
信さんが、自分の膝を何度も叩きながら笑う。
アルコールが入ったせいか、それからオレは昔のことをぽつぽつと話してしまった。
母の病気が見つかった経緯を、オレは知らない。少なくとも、オレの前で具合が悪そうな様子を見せたことはなかった。だから入院することを聞かされたときは、頭が真っ白になったのを覚えている。
そしてわずか半年後に、母は息を引き取った。苦しそうな顔を見たことは一度もない。最期のときも、穏やかだった。
「母は幸せだと言っていました。だから悲しむなと。でもオレからすると、当たり前に続くと思っていた家族の時間が、突然奪われてしまったような感覚で」
「そうかぁ……」
そう呟く信さんの目が、赤くなっていた。隣の睦美さんは、何度も鼻をかんでいる。
オレの言葉に頷きながら、睦美さんが信さんの隣に座った。
「それじゃあ、瑛士君が家事をしよったと?」
いつの間にか睦美さんも「瑛士君」呼びになっている。ちなみに、拓也君もだ。そのほうがしっくりくるし、不思議と悪い気はしなかった。
「そうですね。オレも洗濯機の使い方すら知らなかったので、最初はひどいありさまでしたよ。洗剤を入れすぎて、すすぎをしたのに泡だらけで」
「ははは! そりゃ大惨事だなぁ」
信さんが、自分の膝を何度も叩きながら笑う。
アルコールが入ったせいか、それからオレは昔のことをぽつぽつと話してしまった。
母の病気が見つかった経緯を、オレは知らない。少なくとも、オレの前で具合が悪そうな様子を見せたことはなかった。だから入院することを聞かされたときは、頭が真っ白になったのを覚えている。
そしてわずか半年後に、母は息を引き取った。苦しそうな顔を見たことは一度もない。最期のときも、穏やかだった。
「母は幸せだと言っていました。だから悲しむなと。でもオレからすると、当たり前に続くと思っていた家族の時間が、突然奪われてしまったような感覚で」
「そうかぁ……」
そう呟く信さんの目が、赤くなっていた。隣の睦美さんは、何度も鼻をかんでいる。



