至上最幸の恋

「そこ座って待っとってな。もうすぐ終わるけん」

 信さんが応接スペースを指さした。テーブルも椅子も、いわゆる事務用とは違う、木の温かみを感じるものだ。

「もう従業員はおらんけん、気にせんでゆっくりしとき」

 そう言いながら、信さんはデスクに座り、ワープロのキーを打ち始める。その打つ手つきは、思ったよりずっと慣れていた。

 高い天井では、シーリングファンがゆっくり回っている。事務用のデスクも木の天板だ。

 よく見える位置にあるホワイトボードには、20人ほどの名前と、それぞれの現場らしき地名が書かれていた。思っていたより、手広くやっているらしい。

「芥屋の大門は見てきたね?」
 
 なめらかな打鍵音を響かせながら、信さんが声をかけてきた。

「はい。いつか遊覧船に乗って、正面からも見てみたいですね」
「おう、そんときはまた、うちに泊まりにくればよかたい」

 季節が変われば景色も変わる。展望台で寂寥感に襲われたのは、きっと冬のせいだ。そう思うことにして、次は夏にでも来てみるかと考えた。

 しばらくして、仕事を終えた信さんと一緒に事務所を出た。

「いやぁ、助かるわ。本当は、家内に迎えに来てもらう予定やったけん」
「泊めてもらうんですから、これくらいはさせてください」

 信さんは普段、自家用車で出社しているらしい。だが、いまは車検に出しているとのことで、オレのレンタカーで家へ向かうことになった。