至上最幸の恋

 オレは本当に、ひとりで生きていけるのだろうか。絵が描けるならそれでいいと思っていたのに、急に不安が襲ってきた。

 いや、孤独ではないはずだ。いつも見守ってくれる父や慧がいる。仕事面では桂木さんに支えられている。折に触れて作品を褒めてくれる磯崎も、別々の道を選んだ律も、オレを応援してくれている。

 そして、オレの絵を見て涙を流したエリサも。
 彼女のように、絵を通して受け取ってくれる人がいる限り、オレは孤独ではない。

 そのはずなのに、胸に大きな穴が空いている。オレは一体、なにを失ったのだろう。

 考えても分からない。目の前に広がる海は、ただ波を寄せて返しているだけだ。

 風が一段と冷たくなってきた。
 灯りもほとんどないようだし、そろそろ引き上げなければ。

 駐車場に戻るころには、あたりはすっかり暗くなっていた。

 近くの公衆電話から信さんの会社にかけて、いまから向かうことを伝える。地図で見る限り、ここから20分くらいで着きそうだ。

 心がざわついているのは、未知の場所にいるから。そう思うことにして、車を発進させた。

「おお、ちゃんと来よったな!」

 長谷川工務店のドアを開けると、明るい声で迎えられる。
 意外と言っては失礼かもしれないが、事務所は外観から内装まで、かなりモダンな造りだった。