至上最幸の恋

 湘南の海とは違う、荒々しくうねる波。その海岸線に沿って、美しい松原が広がっている。
 無性に創作意欲をかき立てられ、車を停めてカメラを手に取った。

 平日で、しかもかなり冷え込んでいるので、人影はない。せっかくだしスケッチもしておこう。

 何枚か写真を撮ったあと、砂浜の端に腰を下ろした。

 国内でも、行ったことのない場所は多くある。生きている間に、どれだけの風景と出会えるのだろう。

 長生きしたいと思ったことはない。人生は、長さより密度のほうが大事だと思う。たとえ短かったとしても、多くの景色に出会い、その美しさを描けたのなら、それだけで満足できる気がする。

 目を向けるたびに、雲や波の形が変わる。移り変わっていく姿を見ると、なぜか心が安らぐのを感じた。

 ……そうか。永遠ではないからこそ、美しいのか。

 もし世界の景色が変わらないのであれば、ただ目の前に在り続けるだけで、ここまで心を動かされることはないだろう。変わっていくことを知っているからこそ、人はそこにさまざまな感情を抱くのかもしれない。

 景色だけではない。人も物も、同じなのかもしれない。変化を「劣化」と見てしまえばおしまいだが、古びていくものに味わいを見出す心があるからこそ、美というものが成り立つ。

 オレが描きたい普遍の美は、きっとそういう心の奥に触れるものだ。