「お兄さん、ラッキーやねぇ」
アキという女性が戻ってきた。手には色紙を持っている。
「信さんは、すごく顔が広い人やけん。なにかあれば、きっと力になってくれるよ」
「そうなんですね」
「ほれ、瑛士君よ。これにサイン書いてくれんね」
色紙をずいっと差し出された。
「えっと、長谷川さん」
「信でよか」
「信さん、オレみたいな無名の人間が書いても……」
「いいや、瑛士君は大物になる。おいはな、人を見る目はあるとぞ。ほら、書かんね」
かなり強引だな。少しだけ、エリサの無邪気な笑顔を思い出した。
これは断れそうにない。仕方ない、とりあえず絵に入れる署名を書いておくか。
「日付も入れとってな」
「ああ、はい」
言われるがまま日付も書いて、信さんに色紙を手渡した。
「よしよし。アキちゃん、目立つところに飾っとき。浅尾瑛士大先生のサインやけんな」
「はいはい」
「大先生って……」
「ところで、瑛士君はどげな絵を描いとるとね?」
このタイミングでそれを訊くのか。まったく、なかなか愉快な人だ。しかし、嫌な気はしない。
「日本画です。おもに風景画を」
「なるほど、それなら糸島はもってこいやな。自然がたくさんあるけんな」
車を走らせているだけで、海と山が近い土地だと分かる。東京とは、空気の密度からして違う気がした。
アキという女性が戻ってきた。手には色紙を持っている。
「信さんは、すごく顔が広い人やけん。なにかあれば、きっと力になってくれるよ」
「そうなんですね」
「ほれ、瑛士君よ。これにサイン書いてくれんね」
色紙をずいっと差し出された。
「えっと、長谷川さん」
「信でよか」
「信さん、オレみたいな無名の人間が書いても……」
「いいや、瑛士君は大物になる。おいはな、人を見る目はあるとぞ。ほら、書かんね」
かなり強引だな。少しだけ、エリサの無邪気な笑顔を思い出した。
これは断れそうにない。仕方ない、とりあえず絵に入れる署名を書いておくか。
「日付も入れとってな」
「ああ、はい」
言われるがまま日付も書いて、信さんに色紙を手渡した。
「よしよし。アキちゃん、目立つところに飾っとき。浅尾瑛士大先生のサインやけんな」
「はいはい」
「大先生って……」
「ところで、瑛士君はどげな絵を描いとるとね?」
このタイミングでそれを訊くのか。まったく、なかなか愉快な人だ。しかし、嫌な気はしない。
「日本画です。おもに風景画を」
「なるほど、それなら糸島はもってこいやな。自然がたくさんあるけんな」
車を走らせているだけで、海と山が近い土地だと分かる。東京とは、空気の密度からして違う気がした。



