至上最幸の恋

 そして、きちんと自分の言葉で伝えなければ。そう思いながら、帰路についた。

 とはいえ、いまのオレに必要なのは旅だ。
 制作をある程度進めたあと、バックパックに荷物を詰め込んで、久しぶりのひとり旅へ出た。

 行き先は西にした。特に理由はない。ただ、東京からできるだけ遠い場所へ行きたかった。
 まずは福岡まで飛行機で行き、そこでレンタカーを借りた。
 
 文化が異なる海外に行く前は、ガイドブックで基本的な情報を頭に入れておく。しかし国内の場合は、完全に行き当たりばったりだ。
 とりあえず街を離れ、自然豊かな糸島へと車を走らせた。

「お兄さん、旅行者?」

 道中、定食屋で昼食をとっていると、隣に座った中年の男が話しかけてきた。どうやらこの店の常連らしい。

「東京から来ました」
「ほぉー、東京か。ひとりでね?」
「はい。自然の景色が見たくて」
「そんなら、芥屋の大門(けやのおおと)がおすすめやね。サンセットロードを、ずーっと行くと。遊覧船に乗りゃ、すんげぇ絶景が見れるとさ」

 芥屋の大門か。確か日本最大の玄武岩洞だったな。このあたりにあるのなら、一度は見ておかなければ。

「しかし、なんだってひとりでこんな田舎に?」
「気分転換と、絵の題材探しですね」
「絵? 画家先生かね?」
「まぁ、一応……」

 もう堂々と名乗っていいはずなのに、つい「一応」と言ってしまった。