川沿いの橋には、ぼんやりと白い霧がかかっていた。
街はハロウィンの浮かれた喧騒で賑やかだが、ここだけは静かだ。
SHT社でもハロウィン行事として仮装をして仕事、葵はウサギの着ぐるみを着ての帰り道。
白い耳が風に揺れ、月明かりに照らされてふわりと光る。
隣の佐竹はいつも通りの黒制服に黒手袋であった。
「月とウサギ〜♡ ここで写真撮ろうっ! れん見て〜♡ 今日のお月さま、まん丸でめちゃくちゃ映えるよっ!」
スマホを掲げ、夢中でアングルを探す葵。
佐竹が低く警告する。
「気をつけろ」
その瞬間手から滑り川に飛ぶスマホ──
ポチャンッ。
「あああああーーっ!? わ、わたしのスマホーーーっ!!」
半泣きで身を乗り出す葵を、佐竹が片腕で引き止めた。
「落ちたのはスマホだけで済んだと思え」
「だ、だってぇ……れんと一緒の映え写真撮りたかったのに……」
そのとき、霧がふっと濃くなり、ヌッ……と影が現れる。
眼鏡がギラリと光る。
戦略部門の佐竹の副官、片岡一真にそっくりな幽霊であった。
「おまえが落としたのは──金のスマホか? 銀のスマホか?」
「か、片岡課長のオバケっ!?」
葵は必死に答える。
「ちがいますっ!! わたしが落としたのは普通のスマホですぅーーっ!! プランは無制限ですーー!!」
「……誠実な答えだ。よって、おまえには追加ポイントを与えよう」
葵の頭上にホログラムが浮かび『ギガ無限ボーナス』の表示が現れた。
「わぁぁっ!! れんっ見てっ!! わたし、オバケからギガもらったぁぁ!!」
「くだらん」
佐竹は呆れたように息をついた。

