後悔しない、ひとつのこと

今日は高校の卒業式だ。

「山崎、波田。卒業おめでとう」

「「木浪じゃーん」」

「相変わらずだな」

そして、まだ友人が残る教室に別れを告げる。

時間はあっという間に過ぎていった。

進んでいないように感じられることもあったけど、1度も止まってなんていなかった。

「廉、卒業おめでとう」

「父さん....来てくれたんだ」

「当たり前じゃないか。愛する息子の晴れの日だぞ」

ストレートにそんなことを言われると、少し気恥しい。

でも。

「俺だって愛する父さんが来てくれて嬉しいよ」

俺も言う。

さすがに目は合わせられなかったけど。

「お前っ....泣かせるなよ」

そう言って父さんはボロボロ泣き出した。

「ちょっと父さん!」

俺が父さんをなだめていると、後ろから声がした。

「「卒業おめでとう、廉くん」」

振り向くと、そこには爽のお母さんと燈さんがいた。

「ありがとうございます。父さんが騒がしくて、すいません」

頭を下げると、爽のお母さんはすぐに言ってくれた。

「いいのよ、それが親なんだから」

そう言って微笑むお母さんは、隣の燈さんを見る。

「ほんと、その通りだよ」

ふたりはこの春、結婚することになったそうだ。

燈さんが婿入りする形で。

「「木浪ー!」」

今度は誰だよ。

そんなことを思いながら声がした方を見る。

「「私たち、大学で頑張るから。だから警察学校でくじけないでね」」

どうやら走ってきたらしい。

少し息が切れながらも言う2人は、笑っていた。

山崎は教育学部に。

波田は薬学部に進学するらしい。

爽だったらどこに進学したかな。

もしかしたら就職してるかもしれない。

そんなことを考える俺も、微笑んでいた。