後悔しない、ひとつのこと

「また今日もゴロゴロして。時間大丈夫なの?」

お母さんのお小言だ。

空気が乾燥し肌寒くなる10月、体も必然的に休養を求めやすくなる。

「わかってるって」

「はぁ、ほんとになんでこんなに」

口うるさいな。わかってるって言ってるのに。

今日は平日。もちろん学校はある。

「お母さん仕事行くからね」

「はーい、いってら」

お母さんは小児科医をしてる、立派な社会人。

仕事で小さい子ばっかりみてるから、ちょっと過保護な部分もあるっちゃあるかな。

お父さんはいない。生物学的にはいるんだろうけど。

「出る時はちゃんと戸締りしてよ」

「ん」

私の返事ともとれない返事を聞いてお母さんはまたため息をついて出ていった。

「気をつけてね。今日もありがとう」

お母さんがいなくなった玄関に向かって呟くように言う。お母さんはすぐに無理をしちゃうから。

まぁ私のせいか。

そんなことを考えながら登校する準備を始める。時刻はちょうど8時。まぁギリってとこか。

家から学校までは30分かからない。自転車で行くともっと早いんだけど、歩いていく。その方が楽なんだよね。

10分経たないうちに家を出る。もちろん、ちゃんと戸締りしてね。家を出ると、冷たい風が吹きつけてくる。

「もう冬か…まだ11月なってないけど」

なんて言いながら歩いてたら、すぐ学校に着いた。

(さわ)、おはよう」

そう言いながら手を振ってるのは大親友、優菜。

「おはよ、瑞希は?」

「まだ来てないよ」

瑞希というのも大親友。

「おっはよー!!」

噂をすればってやつかな。

「「おはよう」」

「うん!」

この子は本当に屈託のない笑顔を浮かべる。

    キーンコーンカーンコーン

「やば、チャイム鳴った」

「急げー!」

とは言いつつも、教室前の廊下にいるんだけどね。

席に座ってしばらくして担任が来た。

「出欠とるぞー」

そう言ったのと同時に勢いよく扉が開けられた。

「セーフ!!」

「アウトなー、早く座れー」

「えー、マジか」

そう言いながら笑っているのは、木浪廉。このクラスのムードメーカー。

木浪は席が前後でちょっと話すぐらいだけど、この人の笑顔はとにかく嘘くさい。

「はよ、七瀬」

自然に挨拶をして、自然に後ろの席に座った。

「おはよ、今日もまた遅刻だね」

少しの間の後に、そう返した。

「いや、今日はセーフだろ」

また、ケラケラ笑う。上辺だけ。