後悔しない、ひとつのこと

明人さんは廉の方に目をやり、声をかける。

「廉、来なさい」

廉は肩を震わせたものの、迷うことなく歩みを進めてやってきた。

不安そうな明人さんと目が合い、私は頷いた。

できる限り、力強く。

明人さんはゆっくり語る。

「廉、今まで申し訳なかった」

廉は本当にびっくりしたようで、これでもかと言うぐらいに目を見開いている。

「母さんが死んだのは、廉のせいじゃないってわかってたんだ。でも、廉の顔を見ると.....こいつのせいでって...そんなふうに自分の中で誰かが囁いていて......」

苦しそうに顔を歪めて、明人さんの言葉を待っている廉。

「ごめんっ....そんなことを思ってるのに父親でいる資格があるのか。でも廉には俺しかいないんじゃないか。そうやって考えてたらわからなくなってしまった」

涙を零しながらそう語る明人さんに、廉はゆっくりと歩み寄って言った。

「父さんは俺が嫌いじゃないの?憎く....ない?」

明人さんは、はっと顔をあげる。

「ごめん.....本当は、1番大切で....守りたかった」

その言葉を聞いて、廉は泣き崩れた。

明人さんも廉も、今まで溜めていた涙を放していた。

二人で、支え合いながら....しばらくずっと。

どこからか2人をそっと包むような、そんな風が吹いてきた。