後悔しない、ひとつのこと

月日が経つのはあっという間で。

赤く色づいていた木々も気づけば白く染まるようになっていた。

「うぅ〜さむい」

瑞希が優菜にくっつく。

「やばいね」

そんな他愛もない話。

でも友人とするのには十分な話。

「あ!そういえば爽。クリスマス、デートするでしょ?」

「え?明日のこと?」

もうクリスマスか。
時間の流れは早いな、なんて考えながら答える。

「うん、木浪くんと」

「予定はないけど」

「「ええ!?」」

相も変わらず2人のシンクロ率は高い。

「2人って付き合ってるんじゃないの?」

付き合ってる、か。

遊びにはちょくちょく行ってるけど...

別に付き合ってるわけじゃないよな。

「うーん、付き合ってるわけじゃ_」

「爽、ちょっと待って」

優菜が急に真剣な顔で言う。

「優菜、今いいとこだったのに」

瑞希はちょっと不貞腐れている。

「誰か、電話鳴ってるよ」

言われてみれば着信音が聞こえるような...

「爽じゃない?」

スマホを出して確認する。

「.......廉だ」

「木浪くん!?クリスマスのお誘い!」

瑞希は確信したように言い、笑ってみせる。

「ごめん、ちょっと出てくるね」

「「いってらっしゃーい」」

2人に断りを入れて廊下に出る。

今日は終業式の前日なこともあってか、学校にはもうほとんど人が残っていない。

ほとんどの人が遊びに行ったのだろう。

そんなことを考えながら電話に出る。

「もしもし?廉、どうし_」

「こんにちは」

それは、いつもの優しい廉の声ではなかった。

''父さん!''

電話の奥の方から廉の声がした。

「廉のお父さん、ですか?」

「そうです、廉の父です。話があるんです。お会いできませんか?」

口調は丁寧だった。

かつて、私が電話越しに聞いたあの言葉を発した人と同じ人物とは思えないほど。