後悔しない、ひとつのこと

あの日、廉がちゃんと笑って、泣いた日。

あの日から廉は感情を私にたくさん伝えてくれる。

表情で、言葉で、行動で。

「ごめん、待たせた?」

今日は前に約束した遊びに行く日。

目的は達成されたけど、今はただ廉と遊びたいから。

「待ってないよ、行こう」

今日は映画を観る。廉が観たいって伝えてくれた。

でも映画館に着いた時は流石にびっくりした。

「廉、映画って...恋愛映画?」

「もしかして嫌いだった?」

しょんぼりしながら言う廉の頭には垂れた耳が見えた。
って何考えてんの。

「ううん、好きだよ」

「ならよかった。じゃあ行こ?」

廉のほっとした表情は心の底からのもので。

私はつい笑みがこぼれる。

「どうしたの?」

「いや?いいことあったなって」

「なにそれ」

こうやって廉と私が心から笑い合えてるなんて、信じられない。

こんな日々を過ごすと、もっと欲張りになってしまう。

映画を観ている途中でも、廉は笑顔になったり泣いたり、すっごく表情豊かだった。

エンドロールでは2人して目が腫れるぐらい泣いて。ちょっと恥ずかしかったけど、本当に嬉しかった。

「すっごくいい映画だったね」

「うん、感動した。ありがとう」

「え?なにが?」

何か感謝されるようなことをしたかと記憶を漁る。どれだけ漁っても、見当もつかない。

「私何かしたっけ?」

「感情を分け合おうって言ってくれたこと。おかげで映画を楽しめた。今までだったら泣けなかったもので、泣けた。美しいと思えた。」

「じゃあまた来よう。そして、感じたことを共有しよう。約束ね」

「うん、絶対」


そんな日々を過ごしてたからかな。

普通に考えたらわかることが、わかってなかった。

平和な日々が過ごせる。
約束を果たせる。
また約束ができる。
そんな日々がすぐ先に待っている。
そんな勘違い。