「お母さん、買ってよ〜」
「ダメです。母さんは買いません」
「なんで、ダメなの?」
「いい?欲しいものが全部手に入るわけじゃないの」
「どうしたら手に入る?」
「そうね、廉がいいことしたらかな。はい、幼稚園行ってらっしゃい」
「いってきまーす」
その数日後だった。
急に父さんが幼稚園まで迎えに来たんだ。
「廉くん、おいで」
「なあに、先生」
「お父さんがお迎え来てくれたよ」
「ほんと?じゃあもう帰るの?」
「うん、またね」
「先生またね」
父さんは焦った顔をして車を運転していた。
その表情は今でも頭に焼き付いている。
「お父さん、どこ行ってるの?」
いつもと違う道だったんだ。
でも父さんに聞いてもなにも答えてくれない。
しばらくしてから、病院に着いた。
そして初めて父さんが口を開いたんだ。
「ごめんな、廉。辛いかもしれないけど、我慢して」
すっごく辛そうな顔だった。
その時、なんで病院なのか分かってなかった。
けど、すぐにわかった。看護師さんにある部屋を案内してもらってから。ある話をしてもらってから。
父さんは、父さんじゃなくなったんだ。
優しい父さんはいなくなった。
看護師さんに案内してもらった部屋には母さんがいた。
でも笑いかけてくれない。ずっと目を閉じたまま。
看護師さんは、父さんに話した。
「息子さんのおもちゃを買いに行っていたようです。その際、信号無視の車と。お荷物の中にこちらがありました。では失礼します」
そう言って置いていったのは、俺がねだったおもちゃだった。
父さんは泣きながら僕に話しかけた。
「廉、お前のせいなのか?いや、違う...」
父さんは病院では俺と一緒に泣いてくれたんだ。俺を抱きしめて。
けど、家に帰ってからは違った。
俺が母さんの姿を探して泣き始めると、最初こそなだめ、慰めてくれていた。
だがしばらくすると変わった。
「お前が泣くな!母さんはお前のおもちゃを買いに行って死んだんだ。お前のせいなんだよ!泣きたいのは母さんだぞ!」
初めはびっくりした。本当にこの人は父さんなのか疑った。
でも父さんは間違ってなかった。
俺のねだったおもちゃで母さんは死んだから。
次第に父さんは俺を殴るようになっていった。
俺が泣くと、父さんは決まって言った。
「お前は笑えよ。何があっても、笑え」
そして俺は泣くのは1人の時だけ、誰にも見られないように。違和感は与えないように。
人の感情に合わせることを覚えた。
誰かが笑えば笑い、誰かが悲しめば自分も悲しむ。
そんなことをしていたら、感情なんて消えた。
...初めから、俺が持ってていいものではなかったのかもしれない。
「ダメです。母さんは買いません」
「なんで、ダメなの?」
「いい?欲しいものが全部手に入るわけじゃないの」
「どうしたら手に入る?」
「そうね、廉がいいことしたらかな。はい、幼稚園行ってらっしゃい」
「いってきまーす」
その数日後だった。
急に父さんが幼稚園まで迎えに来たんだ。
「廉くん、おいで」
「なあに、先生」
「お父さんがお迎え来てくれたよ」
「ほんと?じゃあもう帰るの?」
「うん、またね」
「先生またね」
父さんは焦った顔をして車を運転していた。
その表情は今でも頭に焼き付いている。
「お父さん、どこ行ってるの?」
いつもと違う道だったんだ。
でも父さんに聞いてもなにも答えてくれない。
しばらくしてから、病院に着いた。
そして初めて父さんが口を開いたんだ。
「ごめんな、廉。辛いかもしれないけど、我慢して」
すっごく辛そうな顔だった。
その時、なんで病院なのか分かってなかった。
けど、すぐにわかった。看護師さんにある部屋を案内してもらってから。ある話をしてもらってから。
父さんは、父さんじゃなくなったんだ。
優しい父さんはいなくなった。
看護師さんに案内してもらった部屋には母さんがいた。
でも笑いかけてくれない。ずっと目を閉じたまま。
看護師さんは、父さんに話した。
「息子さんのおもちゃを買いに行っていたようです。その際、信号無視の車と。お荷物の中にこちらがありました。では失礼します」
そう言って置いていったのは、俺がねだったおもちゃだった。
父さんは泣きながら僕に話しかけた。
「廉、お前のせいなのか?いや、違う...」
父さんは病院では俺と一緒に泣いてくれたんだ。俺を抱きしめて。
けど、家に帰ってからは違った。
俺が母さんの姿を探して泣き始めると、最初こそなだめ、慰めてくれていた。
だがしばらくすると変わった。
「お前が泣くな!母さんはお前のおもちゃを買いに行って死んだんだ。お前のせいなんだよ!泣きたいのは母さんだぞ!」
初めはびっくりした。本当にこの人は父さんなのか疑った。
でも父さんは間違ってなかった。
俺のねだったおもちゃで母さんは死んだから。
次第に父さんは俺を殴るようになっていった。
俺が泣くと、父さんは決まって言った。
「お前は笑えよ。何があっても、笑え」
そして俺は泣くのは1人の時だけ、誰にも見られないように。違和感は与えないように。
人の感情に合わせることを覚えた。
誰かが笑えば笑い、誰かが悲しめば自分も悲しむ。
そんなことをしていたら、感情なんて消えた。
...初めから、俺が持ってていいものではなかったのかもしれない。
