サナは、スマホの画面を何度も見つめていた。

「突然の連絡でごめん。お元気ですか?
よかったら、会いませんか?お返事頂けると嬉しいです。」

たった4行。それだけなのに、心がざわつく。
返信ボタンを押す指は、今日も動かない。

大学の講堂では、講師がマイク越しに何かを熱弁している。
けれどサナの耳には、ひとつも入ってこなかった。

返信を迷い始めて、もう2日が経つ。
そろそろ返さなきゃ――と思った瞬間、また「やっぱりやめよう」と心が揺れる。
行かないなら、返事をしなくてもいい。
向こうも、返事がなければ察してくれるだろう。
……そう考えた次の瞬間、やっぱり迷う。

その繰り返しだった。

講義が終わると、サナは学食へ向かった。
友人と昼ごはんを食べる予定だ。
混み合う時間帯なので、2人分の席を確保してカバンを置く。
こうでもしないと、知らない人に座られてしまう。
相席は、今の気分じゃきつい。

友人を待ちながらも、頭の中ではまだ「返信どうしよう」がぐるぐるしていた。
――3年前のことなのに。