数日後
○昼間、土田のアパート
ベット横のローテーブルにお菓子や飲み物。
多世「ニヤけ過ぎよ…」
土田「え、ニヤけてた!?」
多世「モッチーが隣の部屋に来るからって。そもそも何でお隣が引っ越すの分かったの?」
土田「お隣さんと世間話する程度には仲良くしててさ、引っ越し考えてる話をたまたま聞いたんだよ」
多世「なるほどねぇ。大学もバイト先も同じで、住むアパートまで同じになったらもう運命かもねー」
土田「え、やっぱそう思う!?」嬉しそう
多世「…。」
(モッチーが居候先のお兄さんとカナダに行ったなんて、口が裂けても言えないわ)


ホワイトデー
○日中、ホテル内のレストラン
テーブルの上に苺のアフタヌーンティーセット2つ。
弥生「アフタヌーンティーだぁ!」テンション高め
宏樹「お返し何が良いかなって考えた時に一緒に楽しめるものがいいと思ったんだ。ちょうどアフタヌーンティーしてるって会社の子に聞いてさ」

穏やかに楽しむシーン。

カフェを出て歩く2人。
ズキッ…弥生の足元
弥生(痛っ…合わないパンプス履いてきちゃったからかな…。絆創膏忘れたし帰るまでの我慢)
宏樹「弥生ちゃん、そこのベンチに座って少し待ってて」
その場を離れる宏樹
弥生「えっ…」

宏樹「お待たせ」手にショップ袋持っている。
戻ってきた宏樹は弥生の前に跪く。
宏樹「痛いのどっちの足?」
弥生「え…なんで」
宏樹「ほらどっち?」
弥生「右…です」
宏樹は弥生の右足を持ちパンプスを脱がせ、自分の太ももに置く。
絆創膏を取り出し、赤くなった指に貼る。
宏樹「スニーカー買ってきたから…」
スニーカーを出し、弥生に履かせる。
弥生「あの、自分でやります」
宏樹「いいからいいから」
スニーカーの紐を結びながら
宏樹「弥生ちゃんってさ、本当に優しいよね」
弥生「え?」
宏樹「僕に気を遣って痛いの我慢するなんて優しいよ。しかもその優しさを当たり前のようにするから、自分では優しいと思ってないでしょ?例えば、僕が夜遅く家で仕事する時は必ず夜食や栄養補給食品用意してくれたり、困っている人がいたら迷いなく声をかけたり、小さな優しさから大きな優しさまで当たり前にできるところが本当に素敵だなって思う」
弥生「…優しいのは宏樹さんの方ですよ。痛いのに気付いてくれて靴まで用意してくれて。それによく知らない大学生をこんなに長い期間面倒見てくれるなんて、神様仏様レベルです」
宏樹「あはは、それは過大評価し過ぎだよ。…そう思ってくれてるなら、優しくしたいと思えるのが弥生ちゃんだからって話。…よし結べた」
弥生「ありがとうございます」
宏樹「お洒落してきてくれてありがとね。帰ろっか」微笑み
弥生(これ以上優しくされると勘違いしてしまう…。そうなる前に離れなきゃ…)切ない表情


次の日
○夜
バイトが終わり、スイミングスクールから出てきた弥生と土田の姿。
土田「あ、モッチーこれ、1日遅くなったけどホワイトデー」
小さな紙袋を手渡す。
弥生「ありがとう。開けてもいい?」
土田「うん」
ハンドクリームが出てきた。
弥生「えー嬉しい!」
土田「匂いの好みとかあんま分かんなくて、もし苦手な匂いだったら使わなくていいから」
蓋を開け、手につける弥生。
くんくん
弥生「うん、めっちゃ良い香り!」
土田「よかったぁー」

○マンション
エレベーターを待っていると、ちょうど宏樹も帰ってきた。
宏樹「弥生ちゃん!」
弥生「あ、お疲れ様です!」
エレベーターに乗る2人。
宏樹(!)
「なんか良い香りするね、弥生ちゃんかな?」
弥生「あ、少し前にハンドクリーム塗ったからその香りかもしれません。ツッチーがホワイトデーにくれたんですよ」
宏樹「…そうなんだ」


数日後
○夜、リビング
夜ご飯の後、ソファで話す2人。
弥生「明日のバイト終わり、ツッチーの家に寄るので少し帰りが遅くなります」
宏樹「え、土田君家で夜ご飯食べて帰るの?」
弥生「あーご飯どうするかまだ決めてなくて。現状回復工事ですっけ?それが終わり次第即入居したいなと思ってるので、内見できる日がなくて。部屋には行った事あるけど、お風呂とか水回りはそんなに見たことなかったから、その確認にお邪魔しようと思って」
宏樹「あーなるほど…」


次の日
○夜、土田のアパート
土田「せっかくだし何か食ってく?つっても冷凍もんしかないけど」
弥生「いいの?ありがと。…ツッチーの家に1人で来たの初めてかも」
土田「そだっけ?あー、いつもたよちゃんいるイメージだな」
弥生「ここに住み始めたら、たよちゃん私の家にもよく来るようになるかな?」
土田「ぜってー来るよ。もう俺とモッチーの部屋をローテーションすんじゃない?」
弥生「あはは、想像できるのが逆に怖い!」
盛り上がる2人だけの時間に、頬染めて嬉しそうな土田。

○マンション
リビングのドアを開ける弥生
弥生「帰りましたー」
宏樹「おかえり。…どうだった?」
弥生「想像よりお風呂も広かったですし、キッチンも使いやすそうでよかったです」
宏樹「そっか。じゃあ、迷いなく決まりそうだね」
弥生「ですね。…本当に長い間お世話になりました。また改めてお礼させてください」
宏樹「お礼なんていらないよ。僕が勝手にやったことだし。…土田君は弥生ちゃんが隣に越して来るの喜んでるんじゃない?」
弥生「どうなんですかね。大学もバイトも同じで、アパートまで同じになると周りから特別な関係に思われないか心配な部分はあるけど、何かあった時にすぐ助けてもらえるのは有難いです」
宏樹(助けに…)
冷蔵庫に飲み物を取りに行く弥生
弥生「まぁ、なるべくツッチーに甘えないようにしなきゃですけどね。あ、でもツッチーが私に頼って…っ」
パタン、話しながら冷蔵庫の扉を閉めた瞬間
ぎゅっ…後ろから抱き締められる。
宏樹「…ずっとここに居てほしい…」
弥生(え…)
宏樹「弥生ちゃんを助けるのは、僕だけの役目だから…」
腕に埋もれる弥生の顔。
宏樹「弥生ちゃん…好きだ」横から見たアップめ。
驚く弥生の顔。
弥生(え、これって…告白?)
「好きっていうのは…」
宏樹「…弥生ちゃんと恋愛として付き合いたい」
弥生(宏樹さんと付き合う…)
腕をほどき、体を宏樹に向けた。
弥生「私は…まだ学生だし、宏樹さんのような立場の人と付き合える人間じゃありません」
宏樹「立場は忘れて、1人の人間として僕を見て判断してほしい。僕は学生とか関係なく、1人の女性として弥生ちゃんが好きなんだ」真剣な表情
弥生(宏樹さん…)
宏樹「こっち来て」
ソファに誘導し、座る2人。
宏樹「考える時間が必要ならいくらでも待つし、断るなら遠慮なく振ってほしい」
弥生(…考える…振る…)
宏樹「僕のこと…どう思ってる?」
弥生(…宏樹さんの優しさが私だけの特別ならいいのにって密かに思っていた。年齢の差も、立場の差も忘れられるぐらい、宏樹さんといる時間や空間は幸せで…この気持ちが何だって聞かれたら…)
ぐっと唇に力を入れる
弥生「…好きです。…私もずっとここにいたい…です」宏樹を見ながら
ぎゅっ…宏樹が弥生を抱きしめる。
宏樹「…良かった」
弥生も抱きしめる。
見つめ合う2人を横から見た図。
宏樹「大好きだよ…」
ゆっくりと顔が近づき、キスをする。
宏樹「大切にするからね」
また抱きしめる。
弥生(十分大切にしてきてくれたのに…。これ以上幸せになっていいのかな。…だけど、素直に嬉しい)