春休み開始
2月下旬
○夜、国際空港
様々な人種の人が行き交う中、大きなキャリーケースやバックを持つ弥生と宏樹。
弥生の顔アップめ。
弥生(私はまた夢を見ているのかな…。先月のある夜、宏樹さんがとんでもないことを言い出した…)

回想
○宏樹のマンション、リビング
宏樹「あのさ、来月一緒にカナダに行かない?」
弥生「…へ?カナダ…?」
宏樹「ほら、前にカナダに短期留学行きたかったけど諦めたって話してたでしょ?ちょうど僕も久々に長期休み取って海外行きたいなぁって思ってたんだ。留学じゃなくて旅行にはなっちゃうけど、どうせなら一緒に行けたらなと思って」
弥生(そんな話覚えてくれてたんだ…)
「いや、でも、私今そんなお金なくて」
宏樹「お金の心配はいらないから。大学は春休みに入ってるよね?バイトは休めそう?」
弥生「店長にお願いすれば大丈夫だと思いますけど…さすがにタダで行くわけには…」
宏樹「これは僕のわがままだから、遠慮なく来てほしいなぁ」かわいくおねだりする感じ
弥生「…。」

再び、現在
○飛行機内
宏樹「弥生ちゃん、それ置くよ」
弥生の荷物を荷物棚に置く宏樹。
弥生「ありがとうございます」

席に着く2人。弥生窓際。
弥生(バンクーバーまで9時間ちょっとか…。まさかこんな形でカナダへ行くことになるなんて)窓の外を見ながら
チラッと横にいる宏樹を見ると目が合う。
宏樹「移動時間長いから僕のことは気にせず寝てね。あ、エコノミー症候群防止で、途中立ち上がるの忘れずに」
弥生「はい、ありがとうございます」
 
国際空港での入国手続きやバンクーバーに移動する2人のシーン。

○バンクーバー
弥生「すごーーい!!夢みたい!!」
街の雰囲気を肌で感じ、感動している。
宏樹「治安が良いとはいえ、日本と違って危険な目に遭う可能性も高いから、旅行中は絶対僕から離れないでね」
弥生「はい、わかりました」

ホテルに着いた2人はチェックインする。
部屋に着き、ドアを開ける。
弥生「おぉー!景色すごーい!」
部屋の窓からバンクーバーの街並み。
宏樹「良い部屋でよかったね」
弥生「室内もお洒落…」
ツインベットが目に入る。
弥生(よかった…同室って聞いた時はダブルベッドを想像してしまったから)
宏樹「近くにレストランがあるみたいだから、このあたりを散策した後行ってみようか」
弥生「はい!」


弥生(それからの数日間は、見るもの食べるもの全てが新鮮で、楽しくて仕方がなかった)
バンクーバーの観光スポットやレストラン、雑貨屋などを巡る2人のシーンいくつか。2、3日分、服装違うように。

宏樹「あそこに見えるのが…」
宏樹の横顔。話を聞きながら宏樹を見つめる弥生。
弥生(宏樹さんはこれまで色んな景色を見て、色んな経験をしてきたんだろうな。その経験や景色を私にも伝えてくれる。その気持ちがすごく嬉しいし、一緒にいて成長させてもらえる)  

○夜、ホテル
荷物をまとめている弥生、寝る格好。
弥生(明日帰るのかぁ…あっという間だったなぁ)
宏樹「弥生ちゃん、ちょっといい?」
ベッドサイドに座っている宏樹が弥生を呼ぶ。
少し間隔を空け隣に座る弥生。
宏樹「弥生ちゃんに伝えなきゃいけないことがあって…」
弥生「なんですか?」
宏樹「…ずっと普通の社員だって伝えていたんだけど、違うんだ。…僕は羽瀬川不動産の副社長をしている」
弥生「えっ…」
(副社長…?羽瀬川不動産ってあの有名な大手不動産会社だよね?)
宏樹「祖父が会長、父親が社長をしていて…。騙すようなことして本当にごめん。副社長って聞くと弥生ちゃんが身構えちゃうと思って」
弥生(…そうだよね、普通の会社員があんなマンションに住めないよね。特別な立場の人なんじゃないかって心のどっかでずっと思ってた。だけど、知ることで遠い存在になるのが怖くて聞けなかった…)
「教えてくれてありがとうございます。だから芳樹さんも一緒に働いているんですね」
宏樹「うん、よしには僕の秘書をしてもらってる」
弥生(芳樹さんも言わずにいてくれたんだ)
「…明日朝早いですし、もう寝ましょう」
宏樹「…うん」

次の日、帰りの飛行機内
何か考え事をしているような表情で窓の外を眺める弥生。


3月
○昼、ファミレス
多世「ええ!?!?カナダに一緒に行ったぁ!?」
陽奈「わーすごい展開だねぇ」
弥生の向かいに多世と陽奈が座っている。
多世「え、まじで何なのよ、2人の関係って。ただの居候女子大生をタダでカナダに連れてく!?てか、そんなお金どこにあんのよ!」
弥生「いや、どんな関係って聞かれても…」
(2人には副社長だってことは言えていない…)
陽奈「うーん、愛なんじゃない?」
弥生「え!?」
多世「あたしも思った!好きでもない女のためにそこまでしないわよ!」
頷く陽奈
弥生「ちょっと待って!そんなわけないから!一緒に暮らしてる私を気にかけてくれてるだけというか…」
多世「気にかけるレベルじゃないから!そもそもモッチーはどう思ってんのよ、お兄さんのこと」
多世と陽奈は弥生を見る。
弥生「どうって…。すごく素敵な人だと思うし、尊敬もしてるけど…」
陽奈「けど?」
弥生「今の関係性が1番いいのかなって。居候を続けるって意味じゃなくて、その…」
多世「今の関係が何なのか自分でも分かってないじゃない。友達でもないし、ただの知り合いでもないし、いっそのことお兄さんにこの関係は何ですかって聞いてみなさいよ」
弥生「…。」


次の週
○夕方、スイミングスクール
休憩時間
土田「モッチー!」
時差で休憩の土田がスタッフルームに入って来た。
弥生「あ、お疲れ」
土田「お疲れ!モッチーに朗報がある!!」
弥生「朗報?」

○夜、宏樹のマンション、リビング
夜ご飯を食べる2人。
弥生「あの実は…次の家が見つかったんです!」
宏樹「えっ…」
弥生「前に会ったツッチーって覚えてます?」
宏樹「あぁ、あの元気な感じのバイト先が同じ」
弥生「そうですそうです。ツッチーが一人暮らししてる部屋の隣が空くらしくて!家賃も立地もクリアしてるし、入居は少し先になっちゃうけど、そこに決めようと思って」
宏樹「そっか。無事見つかってよかったね」
弥生「はい…」
(これで良かったんだよね…?なんだろう、この心に引っかかる感じ…)

○宏樹の寝室
ベッドに仰向けで寝転ぶ宏樹。
宏樹(今の関係でこれ以上引き止める権利は俺にはない)
「はぁ…どうにかしたいけど」
腕を目やおでこあたりに当てる。