数日後
○羽瀬川不動産本社、副社長室
パソコン作業中の宏樹。
宏樹(今日で仕事納めか。今年も大きなトラブルなく終わってよかった)
コンコン、芳樹がノックする。
宏樹「どうぞ」
芳樹「失礼します」

芳樹「親父への新年挨拶いつ行く?例年通り元日にしとく?」
宏樹「…いや、2日にしようかな。よしはそれでも大丈夫?」
芳樹「大丈夫だけど、なんか理由あんの?」
宏樹「たまにはゆっくり家で新年を過ごしたいんだよ」
芳樹「ふーん」

○夜、駅前
バイト仲間との忘年会の日
土田と待ち合わせしている弥生は、駅前で土田を待っている。
宏樹「弥生ちゃん!」
偶然仕事終わりの宏樹が通りかかる。
弥生「あ、宏樹さん。お疲れ様です」
宏樹「お疲れ様。これから忘年会?」
弥生「はい。遅くなると思うので、先に寝ててくださいね」
宏樹「女の子が夜遅くに1人で帰って来るのは心配だなぁ」
ちょうど土田がやって来る。
土田「?」宏樹を見る
弥生「あ、大学の友達でバイト先も同じツッチーです。で、こちらが私が色々お世話になってる羽瀬川さん」
お互いに会釈する。
土田(色々?)
宏樹「初めまして、羽瀬川です」
土田「土田です、よろしくお願いします」
宏樹「じゃあ、楽しんで」
弥生「ありがとうございます」
去る宏樹の後ろ姿。
土田「すげーイケメンだな」
弥生「ツッチーよりはね」
土田「ひど」
弥生「あはは」

忘年会を楽しむ弥生たちのシーン。弥生の隣は土田。

リビングで仕事をする宏樹が時計を確認する。時刻は0時26分
宏樹(…遅くないか?…大丈夫かな。電話してみようか。いやいや、弥生ちゃんも成人してるし、彼氏でもないのに口出すのは…。でも一緒に暮らしてるなら心配するのは当然だよな!?)

電話をかけている宏樹の姿。
着信音が止まり、弥生が出たと思う宏樹。
宏樹「もしもし、急にごめんね」
土田「あの、すみません…」
宏樹(え…男?)
土田「えっとぉ、さっきお会いした方っすかね?俺、土田ですけど」
宏樹「え、あぁ!そうです羽瀬川です」
土田「モッチーが珍しく酔い潰れちゃって、タクシーで送ろうと思ったんですけど家知らなくて。羽瀬川さん分かります?」

○二次会の居酒屋
店の前に弥生を支える土田の姿。他の人たちは帰った。
宏樹「弥生ちゃん!」
駆け寄る宏樹。
顔を上げ、ぽーっとした表情で宏樹を見る弥生。
弥生「…ひろ…きさん?」
土田「モッチー、迎えに来てくれたぞ!家まで送ってくれるってさ!…お酒強いはずなんですけど、今日は酔いやすかったみたいで」
土田に支えられたままの弥生、密着め。
宏樹「…。後は僕が対応します」
土田から弥生を受け取る。
宏樹「弥生ちゃん、おぶるから背中乗って」
弥生「…はぁーい」酔っていてためらいなし
土田(え…)
宏樹「ありがとうございました。土田君も気をつけて帰ってくださいね」
土田「あ…了解です」
おんぶされ帰って行く姿を見る土田。

○宏樹のマンション
玄関に着いた2人、おんぶ
宏樹「弥生ちゃん着いたよー」
弥生「ん…」ほぼ寝てる
宏樹(寝ちゃってるな)
靴を脱がせ、そのまま弥生用の部屋へ連れて行く。

ガチャ
ゆっくりとベットに寝かせ、そっと布団をかける。弥生の寝顔。
弥生を見つめる宏樹は、そっと髪を撫で、
宏樹「もう心配かけないでね…」囁く
ちゅ、おでこにキスをした。アップめ。
部屋を出て行く宏樹。


次の日
○朝、リビング
弥生「昨日はご迷惑をおかけして大変申し訳ございません!!」※土田からの連絡で知った
立った状態で深く頭を下げる弥生。
宏樹「いやいや、頭上げて?僕が勝手に迎えに行っただけだから」
弥生「宏樹さんが連絡くれなかったら、家に帰れず野宿かツッチーの家にお世話になってたと思うので、本当にありがとうございました」
宏樹(ツッチーの家に…)
「弥生ちゃんは、土田君の家に泊まったことがあるの?」
弥生「え?遊びに行ったことしかないですけど」
宏樹「あのさ…誰と飲みに行こうが、何時まで飲もうが弥生ちゃんの自由なんだけど…必ずここ“家”には帰ってきて。昨日みたいに1人で帰られらない時は、必ず僕が迎えに行くから。約束してくれる?」
弥生(それだけ心配や迷惑かけたってことだよね…)
「…はい」
にっこりする宏樹
宏樹「じゃあ、指切りしとこう」
小指を差し出す。弥生もそっと小指を絡める。
宏樹「ゆびきりげんまん、約束破ったら…」
弥生「破ったら…?」
弥生の唇に人差し指を当てる
宏樹「…内緒」色っぽい笑み
ドキッとする弥生
弥生(子供っぽいと思えば、年上の余裕を見せてくる。この人も掴めそうで掴めない…)


大晦日
○日中、マンション、リビング
ソファに座り、テレビで映画を観ている弥生と宏樹。
弥生(私に気を遣ってなのか、宏樹さんは今日明日は予定を入れなかったらしい。つまり、年越しは宏樹さんと2人ですることに)

映画を観終わり、
宏樹「1年の締めにふさわしい作品だったね」
弥生「そうですね、すごくハッピーな気持ちになりました」
宏樹「だね。…今夜の年越しどうする?家で過ごしてもいいし、どこか神社やイベントに行ってもいいし」
弥生「宏樹さんさえよければ、神社に行ってみたいです。露店とかも楽しみたいかな」
宏樹「いいね」

○夜、神社
たくさんの人で賑わう境内。露店もたくさん。
宏樹「寒くない?」
弥生「はい、大丈夫です」マフラーぐるぐる巻き
宏樹「何食べよっか」
露店を見て回る2人。

弥生「あ!豚汁配ってますよ」
列に並び、豚汁を受け取る2人。
ごくっ
宏樹「あったかー、身体に染みるねぇ」
弥生「あったまりますね。んー、美味しい」

宏樹「そろそろかな」
カウントダウンが始まり、立ち止まる人々。
周りの人達「10、9、8、7…」
宏樹「弥生ちゃん…来年もよろしくね」
ぎゅ、弥生の手を握る
弥生「…こちらこそよろしくお願いします」頬染め
周りの人達「…3、2、1!ハッピーニューイヤー!!」
盛り上がる周囲
宏樹「明けましておめでとう」
優しく微笑み、弥生を見ながら
弥生「明けましておめでとうございます」
繋いだ手アップ
弥生(このまま家に帰るまで繋いでいたいなんて、新年早々わがままなことを考えてしまった)
2人の後ろ姿。