回想、仮面パーティーの日
○夕方、駅前
宏樹(うちの会社と関係があるからって合コンなんかに参加させられるとは…)
ふと声が耳に入る、弥生の声
声の方を見ると外国人に道を尋ねられて対応している弥生の姿、パーティーに行く格好で。
宏樹(綺麗な子だな…)
ネイティブな英語にも臆することなく堂々と英語で受け答えをしている弥生に感心する宏樹。

説明し終えた弥生は最後に英語で「出会えてよかったです。素敵な時間を」と笑顔で伝え別れた。
そこに実紅が合流する。自分のした行動を特に言うわけでもない。

宏樹(美しさや知性だけでなく、気遣いも兼ね備えた彼女に心が大きく揺れた)
ホテルに向かう2人の後ろ姿を見つめている。

パーティー会場
仮面をつけた弥生と実紅の姿。
宏樹(あれ、あの服…)

宏樹(会場の片隅で1人立っている彼女に話しかけようと思ったら、先に別の男が話しかけた。他の女性と話す傍ら弥生ちゃんを見ていると困った様子になり、迷わず助けた)

助けたシーン

宏樹(いつかまた彼女に会いたいと願いながら数ヶ月が経った頃。偶然、見回りで行った店舗に彼女がお客様として来ていた)

事務所でスタッフの話を聞き、お客様シートを確認しながら
宏樹(望月弥生…もしかして)
事務所内からこっそり弥生の姿を確認する宏樹。
宏樹(やっぱり、あの時の子だ!)

宏樹「良かったら次の家が見つかるまで、僕の家に来ませんか?」

宏樹(我ながら大胆なことをしてしまったと思っている。彼女との縁を繋ぎ止めたい気持ちが前に出てしまった。立場や年齢の差が大きいのは分かっている。だけど、そんなことを無視したくなるほど、一緒に暮らして知った弥生ちゃんは想像以上に魅力的だった)

ガチャ
弥生「お風呂お先にありがとうございました」
湯上がりの火照った色っぽい雰囲気
宏樹「あ、うん」
(彼女のこんな姿を見て、理性を保っている自分を褒めたい…)


クリスマス
○昼過ぎ、大学、体育館
子供スポーツ教室開催日。園児から低学年の子供たち数十人が参加している。
サンタのコスプレをしている学生たち。女子はスカート姿。赤だけでなく、ブラックサンタも。多世や陽奈もいる。
土田「みんなー!メリークリスマース!朝は素敵なプレゼントが届いていたかな?…今日はスポーツ教室に参加してくれてありがとう!」
土田が子供たちの前で進行する
土田「今日は4つのスポーツを体験できるようになっています。時間内であれば、好きなブースをいくつ体験しても大丈夫だよっ。各ブースにいるお兄さんやお姉さんがルールを説明してくれるから、しっかりお話を聞いて参加しようね!」
弥生(ツッチーって、子供相手ほんと上手だよね。保育士とか向いてそう)
土田「みんな分かったかなー?」
子供達「はぁーい!!」

フットサルやハンドボールなどを子供と楽しむ弥生や土田たちのシーンいくつか。

土田「スポーツ教室は以上です。これからも色んなスポーツを楽しんでくれたら嬉しいです!今日はありがとうございました」

女子更衣室に移動した弥生と陽奈たち。
ロッカーのスマホを確認した弥生。
弥生(宏樹さんからメッセージ…)
スマホ画面
『忙しいところごめん。
少し体調を崩してしまって…
寝室から出ないようにしてるけど、万が一移ったら大変だから、友達の家に避難した方がいいかもしれない』
弥生(えっ…)
スマホ画面を閉じ、カバンにしまう
弥生「ごめん、陽奈。急用ができたから先に帰るね!たよちゃんたちによろしく」
陽奈「えっ!?あ…」
着替えずサンタ姿のまま、小走りで更衣室を出て行く

マンションに向かい走る弥生。
すれ違う子供が「サンタさんだぁ!」など反応しているが、弥生の耳には入っていない。
弥生「はぁ…はぁ…」
(あ、そうだ。念の為、薬や飲み物買って帰ろう)

○夕方、マンション、宏樹の寝室
ベットの上でマスクをし頬を赤くし、ぼーっとしている宏樹。
宏樹(しんどくなってきたな…。仕方ない、よし呼ぶか)
コンコン、ガチャ、ドアが開く。
ゆっくりとドアの方を向くと、サンタ姿の弥生がいる。
宏樹「え…」
(サンタ…?)
ベット横にいき、声を掛ける弥生。
弥生「宏樹さん、大丈夫ですか?…ちょっと失礼します」
宏樹のおでこに手をあてる。
弥生(熱い…)
買ってきた冷却シートをおでこに貼る。
弥生「食欲はありますか?」
宏樹「あ、うん」
弥生「わかりました。作ってくるので、少し待っていてください」
部屋を出て行く弥生。
ぼんやりと天井を見る宏樹。
宏樹(俺、夢でも見てるのかな…)

コンコンッ、ガチャ
弥生「お待たせしましたー」
お盆に乗せた雑炊と飲み物をサイドテーブルに運ぶ。ゆっくりと起き上がる宏樹。
宏樹「ありがとう」
弥生「食べれるだけで構わないので、ゆっくり召し上がってください。食べ終わったら置いたままで大丈夫なので。あ、薬も置いておきますね。じゃあ、失礼します」
ぐっ、離れようとする弥生の手を無意識に掴んだ宏樹。
弥生「え」
宏樹(あ…)
弥生「何か他に必要なものありました?」
宏樹「えっ、あ、ううん大丈夫。…ありがとう、サンタさん」優しく微笑む
弥生「え、あっ」
自分の格好がまだサンタなことに気付く。
弥生(この姿で街中走って、ドラッグストアで買い物したの今思えば恥ずかしいよね)
「早く帰らなきゃと思って…着替えてきます」

夜、お風呂に入り終えた弥生は、リビングのテーブルに座っている。
弥生(体調が悪化したらすぐ対処できるように今日はリビングで寝よう)


次の日
○朝、リビング
テーブルで伏せて寝ていた弥生がゆっくりと目を開ける。

宏樹の寝室をノックする。
弥生「おはようございます」
ちょうど起き上がり、水を飲んでいた宏樹。
宏樹「おはよう」
弥生「体調はいかがですか?」
宏樹「弥生ちゃんのおかげで、元気になったよ。本当にありがとう」
弥生「よかったです」
宏樹「…今日はサンタさんにならないの?」
弥生「何言ってるんですか。あれはスポーツ教室のために着ただけです。それにクリスマスはもう終わりましたよ」
宏樹「体調崩したから全然クリスマス満喫できなかったんだよ。サンタさんに会えたら完全復活できるんだけどなぁ」甘えた顔
弥生(もぉ…ここで子供っぽさ出してくるとか…)

ガチャ、リビングのドアが開く。
ソファに宏樹が座っている。ドアの方へ振り返る。
少し恥ずかしそうなサンタ姿の弥生全身ショット。
宏樹「やっぱり夢じゃなかった…」ぼそっと
立ち上がり、弥生の前に立つ
宏樹「サンタさん、昨日のお礼にハグしてもいいですか?」
弥生「えっ、そんなお礼されるほどのことはしてないっ…」
ぎゅっ…
抱きしめられ目を見開く弥生
宏樹「…ありがとう」
ドキッとする弥生
弥生「…。」
弥生は迷いながらゆっくりと宏樹の腰あたりにそっと腕を回す。
弥生(誰かのサンタになる日が私にも来たのかな。…この言葉にできない気持ちがいつか分かりますように…)