前話の続き
○夜中、宏樹のマンション、リビング
ソファで向き合い寝転んでいる弥生と宏樹。
すーすー、宏樹の寝息と寝顔。
弥生(…寝てる?つまり寝ぼけてただけ…)
拍子抜けする
弥生(相当疲れてるんだろうな。…ふぁ〜私も眠くなってきた…)
ゆっくり目を閉じる。


次の日
○朝、宏樹のマンション、リビング
目を開ける宏樹。自分の腕の中に弥生がいることに気付く。
宏樹(!?…え、何で!?)頬染め、焦っている
弥生も目が覚める。
弥生「あ、おはようございます」
宏樹「え、あ、おはよう。えっとぉ…」
弥生起き上がる。
弥生「すみません。昨日宏樹さんがソファで寝てて、起こそうと思ったんですけど、寝ぼけた宏樹さんに捕まって?添い寝する形になってしまったんです。気付いたら私もそのまま寝てしまってて。ほんとごめんなさい」
宏樹「そうだったんだ。というか謝るのは僕のほうだよ。疲れていたとはいえ、寝ぼけてこんなことするなんて…本当にごめんね?」
弥生「いえ、大丈夫です!シャワー浴びてきますか?私、朝ごはんの用意しますね!」
宏樹「うん、ありがとう」


数日後
○朝、宏樹のマンション、リビング
朝食を食べている2人。
宏樹「あ、今日の午後、弟がウチに来るんだけど大丈夫かな?」
弥生「もちろん大丈夫ですよ。ちなみに何時頃ですか?邪魔にならないように帰宅時間調整します」
宏樹「そんなことしなくて大丈夫だよ。何時に来るか分からないし、鍵渡してあるから勝手に来て勝手に帰ると思うから」
弥生「そうですか、わかりました」

○昼間
2限目で終わった弥生は、バイト前に一度マンションに帰った。
玄関に置かれた靴に気づく。
弥生(あ、たしか弟さん来るって言ってたよね)

ガチャ、リビングのドアを開ける。
ソファで電話している芳樹の後ろ姿、スーツ。
弥生(あの人が宏樹さんの弟…)
電話を切り、芳樹は弥生に気付く。
弥生「あ、初めまして。宏樹さんにお世話になっている望月です」
芳樹「…。」軽く睨む
弥生「?」
芳樹「まだ部屋見つかんないの?」
弥生「えっ。…まだです」
(なんか怒ってる?)
芳樹「さっさと見つけて早く出てってよ。兄貴の仕事の支障になるし。つーか、大学生の身分でこのマンション住むとか何様だよ」
弥生(…何この人。ほんとに宏樹さんの弟!?でも、宏樹さんの仕事の邪魔しちゃってるのは事実だよね…)
「ごめんなさい。これ以上迷惑をかけないうちに出て行くので、あともう少しだけ置いてもらえると助かります」
芳樹「…。」※予想外に丁寧に対応されてびっくりしてる

○夕方、バイト先のスイミングスクール
受付をしている弥生。
子供の生徒「ばいばーい」手を振る、隣に親
弥生「また来週ねー。ありがとうございました」

○夜、宏樹のマンション
仕事から宏樹が帰ってきた。
弥生「おかえりなさい」
宏樹「ただいま。芳樹…弟来た?」
弥生「ちょうど私が帰った時にいらしてて。ご挨拶だけさせていただきました。予想より若くてびっくりしちゃいました」
宏樹「あはは、僕の6個下、24歳だよ。弥生ちゃんの方が歳が近いね」
弥生「ほんとだ」
宏樹「口も悪いし生意気だけど、仕事で助けられることも多いんだ」
弥生「そうなんですね」
芳樹の言葉を思い出す。
宏樹「あ、そうだ。明日の夜空いてる?」
弥生「空いてますけど…」
宏樹「一緒に行きたいところがあるんだけど」
弥生(?)


次の日
○夜、駅前
スマホを見ながら待っている弥生
若い男「ねぇ、1人?」
弥生(ナンパ…場所移動しよっかな)
その場を動こうとすると
若い男「ちょっと、逃げないでよ」
前を塞がれる
弥生「すみません、人と待ち合わせしてるので」
若い男「相手が来るまででいいからさ」
弥生(…しつこいなぁ)
若い男「名前なんて言うの?え、無視?」
弥生「…あのっ…」
宏樹「僕の彼女に何か?」
後ろから宏樹がやってきて男に言う。仕事終わりでスーツにコート姿。マフラー首からかけてる。
弥生(宏樹さんっ…)
宏樹の圧倒的なイケメン出来る男オーラに後退りし、去って行く。
宏樹「大丈夫?」
弥生「はい」
宏樹「ごめんね、待たせたせいで嫌な思いさせて」
弥生「私が早く着いただけなので、謝らないでください」
ー「僕の彼女に何か?」
弥生(彼女…ナンパ退治のための嘘とはいえ、なかなかの威力だったな)

○商業施設
金魚アートミュージアム展に着いた2人。
宏樹「知り合いにチケットもらったんだ。じゃあ、入ろっか」

暗い中、幻想的に様々な色に光り輝く金魚展示。
弥生「わぁー…」
宏樹「すごいね」

弥生「綺麗…」
水槽に顔を近づけ、うっとりしている。
そんな弥生の横顔を優しい表情で見つめる宏樹。
展示を楽しむ2人のシーンいくつか、仲良く距離近め。

出口付近で団体客に遭遇し、身動きが取りづらくなる弥生。
弥生(うぅ、進めない)
宏樹「弥生ちゃん、こっち」
手を差し出す。
宏樹の手をそっと握り、歩き進む。
頬を染めている弥生。
弥生(手…大きいな)繋いだ手のアップ

施設を出て、マンションに向かい外を歩く2人。
宏樹「すごく綺麗で感動したね」
弥生「はい!幻想的な空間で癒されました。誘っていただきありがとうございました」
宏樹「こちらこそ付き合ってくれてありがとう」
ひゅー、風が強く吹く
弥生(寒…)
ふわっ、宏樹が自分のマフラーを弥生にかける。
宏樹「風邪ひかないでね」ニコッ
弥生「…ありがとうございます」
(何かあるたびに宏樹さんの自然な優しさに包まれる。自分にだけなのかと勘違いしてしまいそうになるけど、きっとみんなに優しいんだろうなぁ)


○昼間、大学
構内を歩いている弥生。他学科の高校の同級生が声をかける。
友達「弥生!」
声の方を向く
弥生「あー久しぶり!」
2人が話す遠くからの図。

○夜、宏樹のマンション、リビング
夜ご飯中の2人。
宏樹「え?」
弥生「友達の家にお邪魔させてもらえることになったので、来週には出て行けると思います」
宏樹「そのお友達とこれから暮らすってこと?」
弥生「いえ、次の家が決まるまでの間お世話になる予定です」
宏樹「だったらこのままウチにいればいいよ」
弥生「でもこれ以上ご迷惑をかけて、仕事の邪魔になるのも嫌ですし」
宏樹「迷惑なんて思ってないし、仕事は何も関係ない…あ、もしかしてこの前、芳樹に何か言われた?」
気まずそうな表情の弥生。
宏樹「はぁ…よしのやつ。弥生ちゃん、芳樹の言ったことは気にしなくていいから。それとも弥生ちゃんは僕と住むの嫌になった?」
弥生「いえ、そんなことは…」
宏樹「じゃあ、このままウチにいてよ」ニコリ
弥生「…ありがとうございます」
(ほんとにいいのかなぁ…)

弥生がお風呂に入っている間、ソファで考えている宏樹。
宏樹(あんな引き留め方大人げなかったかな…)
伏し目がち
宏樹(弥生ちゃんに初めて会ったあの日、実はホテルに着く前に彼女の姿を見かけていた)