12月
○昼間、大学、講義室
授業と授業の合間にスマホを見る弥生。
スマホ画面、スケジュールアプリ。
弥生(夜ご飯は家で食べるのか、仕事や大学は休みか、共同生活をする上で最低限必要な情報を共有し始めた。私の主な予定は、大学関連、バイト、友達との遊び。社会人である宏樹さんは多忙で、仕事の付き合いでの外食や泊まりでの出張も多い。朝から晩まで顔を合わせる生活ではないから、思ったより気楽に過ごせている)

弥生が全ての授業を終え、1人で門に向かい歩いていると着信のバイブ。
弥生(!)
スマホ画面、宏樹の名前。
弥生(宏樹さん?どうしたんだろう)
「もしもし」
宏樹「もしもし、今大丈夫だった?」
弥生「はい、ちょうど帰ろうとしてたところです」
宏樹「それはナイスタイミング」
弥生(?)
宏樹「今、大学の近くにいるんだけど迎えに行ってもいい?」
弥生「えっ!?」
宏樹「門の外で待ってて。じゃあ後で」
弥生(なんで迎えに…)

門の外で待っていると1台の車が停まる。運転席の窓が開く。
宏樹「弥生ちゃん!」手を振る
車に近づく弥生
弥生「お疲れ様です」
宏樹「寒いから早く助手席に」

弥生「お邪魔します」
助手席に座る。
宏樹「いきなりびっくりさせたよね」
弥生「大丈夫です。何かあったんですか?」
宏樹「あのさ、ドライブ行かない?」
弥生「ドライブ?」
宏樹「急に時間が出来てさ、ドライブ行きたいなぁと思って。1人で行くよりも弥生ちゃんと行く方が楽しそうだと思って来ちゃった」笑顔
キュンとなる弥生。
宏樹「あ、ホットココアよかったら飲んでね」
ドリンクホルダーにカフェで買ってきたカップドリンク。
宏樹「あと、ブランケットも使って」
後ろの席から取り渡す。
弥生「何から何までありがとうございます」
宏樹「いえいえ。じゃあ、出発するね」

道中
運転する宏樹の横顔。
弥生(こんな爽やかで紳士なのに腹筋割れてるんだよなぁ。忙しそうだけどジムとか通ってるのかな)
宏樹「どうかした?」前を向いたまま
弥生(やば、見てるのバレてた)
「いえ。どこに行くのかなぁと思って」
宏樹「着くまでのお楽しみ」

着いたのは紅葉スポット。赤やオレンジに染まった景色が広がる。
車から降りた2人。
弥生「すごーいっ!」
宏樹「綺麗だよね。何年か前に来たことがあって、また見たいと思ってたんだ」

スマホで写真を撮る弥生。
宏樹「せっかくだし一緒に撮ろうよ」
弥生「はいっ」
インカメラにしたスマホを動かしながら、良いポジションを探す弥生。2人は横に並んでいる。
宏樹「高い位置からの方が良さそうだから、僕が撮るよ」
そう言い、弥生のスマホを手に取り、もう片方の手でそっと弥生の肩を抱き寄せた。
カシャ
宏樹「…うまく撮れたはず。後で僕にも送ってもらっていい?」
弥生「あ、はい」
(…なんでだろう。初めて会った日もそうだったけど、宏樹さんに触れられるのは全然嫌じゃない)頬染まる

帰りの車内
宏樹「体育学部って珍しいよね。みんな運動神経良さそうだよね」
弥生「私は平均的だと思います。ずば抜けてる人はアスリート志望だったりもします」
宏樹「そうなんだ。体育教師目指す人も多いの?」
弥生「周りの友達は、体育教師やトレーナー目指してる子が多いですかね。私は、教師というより小さな子供たちにスポーツや運動する楽しさを伝える仕事をしたいなって思ってるんです」
宏樹「それは素敵だね」
弥生「クリスマスに学科の友達と子供達向けのスポーツ教室を開催するんです」
楽しそうに話す弥生、穏やかな表情で聞く宏樹。


数日後。
○朝、リビング
宏樹「僕これから出張で、帰ってくるの明日の夜遅くになるから、今夜は戸締りしっかりね」
弥生「はい」

○昼、大学、食堂
弥生、多世、陽奈、土田で昼ご飯中
土田「モッチー忘年会行く?」
弥生「うん、行く予定だよ」
※2人はバイト先が同じ
弥生(予定アプリに入れとこっと)
多世「冬休みどーするー?あたしは今年、成人式に合わせて帰る関係で、年末年始は実家に帰らず、友達の家にお邪魔する予定なのよ。みんなは?」
陽奈「私は年越し以外なら早めに言ってくれれば合わせられるよー」
弥生(宏樹さんは年末年始どうするんだろう。マンションにいないなら私も帰った方がいいかも?そもそも宏樹さんの実家どこ?)
土田「俺も年越しは地元のやつらとするから、大晦日と元日以外なら空いてる!」
多世「ふむふむ。モッチーは?」
弥生「私はまだ親に確認してないけど、たよちゃんと同じで成人式あたりに帰るつもりだから、合わせるよ」


次の日
○夕方、大学、体育館、ハンドボールコート
入り口付近に立っている弥生の姿。

コートを掃除する土田やサークル仲間たち。
ハンド部の学生「あ、望月さんだ。相変わらずキレーだなぁ。え、土田待ち?」土田見ながら
土田「一緒にバイト行くから」
ハンド部の学生「たまたまとはいえバイト先同じとか良いよなぁ」
自慢げにご機嫌な土田

土田「お待たせ!」
弥生「お疲れ様」
土田「俺、汗臭くない!?大丈夫!?」
弥生「全然。というかバイト前にハンドする体力すごいよね」
土田「今日は短時間だったし、ハンドするのは疲れるよりも楽しいが勝るからさ」笑顔
弥生「ふふ、そっか」

○夜、新幹線内
横並びに座る宏樹と芳樹。
芳樹「明日休みならもう一泊して、ゆっくり帰ればよかったなぁー」
宏樹「家で朝を迎える方がいいんだよ」
スマホ画面、スケジュールアプリ、弥生午前中予定なし。口元緩む宏樹。

○弥生用の部屋、ベット
夜中にふと目が覚めた弥生。
弥生(喉乾いた)

廊下を歩き、リビングに向かうと明かりに気づく。
弥生(あ、電気付いてる。宏樹さん帰って来たんだ)
ガチャ、ゆっくりリビングへのドアを開けるとソファにだらんと座る宏樹の後ろ姿。
弥生「おかえりなさい」
声をかけるも反応無し
弥生(あれ…)
顔を見ると寝ている。
弥生(疲れてソファで寝ちゃったのかな。夜はかなり冷えるし、ベットで寝た方がいいよね)
「宏樹さん、風邪引いちゃいますよ?」
軽く肩を揺らす。
弥生(起きない…。どこかにブランケットとかないかな)
宏樹「んっ…」
弥生「あ、宏樹さん」
薄っすら目を開ける宏樹。
宏樹目線の顔を覗き込んでくる弥生の顔。
宏樹の手が弥生の後頭部から首あたりにいき、そのまま抱き寄せ、一緒にソファに寝転ぶ形になる。向かい合わせ。
弥生(えっ…)