次の週、日曜日
○夕方、宏樹のマンション
高層マンションのエントランス前で、マンションを見上げている弥生の姿。手にはキャリーケースや大きな鞄を持っている。
弥生(何これ…何階建て!?え、宏樹さんってもしかしてお金持ち!?)
スマホで宏樹に着いたと連絡をする。
弥生(名前と30歳で不動産屋勤めなこと、あと連絡先ぐらいしか知らないまま来てしまったけど、大丈夫だったかな?今さら不安になってきた…)
エントランスのドアが開き、私服姿の宏樹が出てきた。
宏樹「弥生ちゃん!」手を上げながら
軽く会釈する弥生
宏樹「お待たせ。荷物持つよ」ナチュラルに弥生の荷物を手にする
弥生(…紳士だなぁ)
「ありがとうございます」

エレベーターに乗り込む2人。宏樹は最上階のボタンを押す。
弥生(最上階!?)

玄関を開け、中に入る。
宏樹「どうぞ」
弥生「お邪魔します」
廊下を進み、リビングダイニングを見る。モデルルームのようにお洒落で広い空間。
弥生(やば、広っ!)

宏樹「僕、仕事で居ないことも多いから、リビングや今から伝える部屋は自由に使ってくれていいから。鍵も渡しておくから僕の事は気にせず好きな時間に出入りしてね」
弥生「あ…はい。ありがとうございます」

ひと通り部屋やお風呂の場所を教えてもらっている図。

リビングに戻ってきた。
弥生(全てが凄すぎて…宏樹さんほんとにただのサラリーマン!?)広いお風呂や大きなベットなどを思い出しながら
宏樹「キッチンも好きに使ってね。冷蔵庫の中身も自由にしてくれたらいいし、足りないものあれば買ってくるから」
弥生「何から何まですみません。ご迷惑をかけないように、なるべく早く出て行くので」
宏樹「そんな畏まったり、気遣ったりしないで。学業にバイトに忙しいんだから、家はゆっくり探せばいいよ。この時期は物件も少ないしね」
弥生「…ありがとうございます」
宏樹「あ、この後予定あったりする?」
弥生「いえ、何も」
宏樹「じゃあ、一緒に夜ご飯食べない?近くに美味しいイタリアンがあるんだ」
弥生「イタリアンですか?」
宏樹「もしかして苦手?」
弥生「いえ、好きです。ただ、服装が…」
(こんなとこに住んでいる人が行くイタリアンなんて、ドレスコードがあるような品のある店に違いないもん)
宏樹「あ、そういえばまだ伝えてなかったんだけど…」
弥生「?」

広々としたウォークインクローゼットの図。フォーマル系から普段着まで様々な服や靴がある。
弥生「すごーい!」
宏樹「全部弥生ちゃんのだから好きに着てね」
弥生「えっ!?全部!?いやいや、高そうな服ばっかですし」
宏樹「弥生ちゃんに似合うかなぁと思って買ったから、ぜひ着てほしいな」
弥生(え、これ全部新品!?…あ、少し前に服や靴のサイズ聞かれたのってこのため!?)
宏樹「あ、これなんかイタリアンに似合いそうだよ。ほら、こっち来て」品のあるワンピースから選ぶ
クローゼット内にある全身鏡の前に弥生を立たせ、後ろから服を合わせる宏樹。
弥生「わぁー素敵なデザイン」
宏樹「うん、すごく似合ってる。可愛い」
照れる弥生。

○夜、イタリアンレストラン
夜景の見える窓際の席に座る2人。コース料理が運ばれてくる。弥生は宏樹の選んだ服に、ヘアスタイルもお洒落に。
宏樹「じゃあ、今日からよろしくね。乾杯」
グラスで乾杯。一口飲んだ弥生は前菜を食べる。
弥生「いただきます」
パクッ
弥生「!!…美味しいーっ」
宏樹「良かった」

食事をしながら
弥生「そういえば、どうして私があの日助けた相手だって分かったんですか?仮面で顔は見えていなかったはずだし」
宏樹「名前と声かな。お客様情報を見た時に、弥生って記載されてて、もしかしたらって思ったんだ。それにあの日聞いた可愛い声と同じだったからさ」
弥生(可愛い声…)ほんのり頬染まる
「そうだったんですね」

帰宅した2人。
宏樹「僕、少し書斎に籠るから、お風呂入って寝ててね。あと、明日は早く出社するから朝いないと思うけど気にしないで」
弥生「はい、わかりました」
(忙しいんだなぁ)

○弥生用の部屋
ベットの上に仰向けで寝転ぶ弥生。
弥生(今だに夢みたい…。家族でも友達でもない人に甘えてばかりじゃだめだけど、宏樹さんがいてくれて本当に助かった)


次の日
○朝、大学、講義室
横並びに座る3人、弥生真ん中。
多世「え!!モッチー見知らぬ男の家に転がり込んでんのぉ!?」
弥生「しーっ、たよちゃん声大きい!」
多世「ごめんごめん。だって、まさかモッチーがそんなことするなんて思わなくて」
弥生「いや、緊急事態で仕方なくなの!次の家が見つかったら即出て行くし」
陽奈「あーお騒がせの幼なじみちゃんに追い出されちゃったんだっけぇ?」
弥生「まぁ、うん」
多世「もぉー、そんなのルームシェアのルール違反だって、むしろ相手を追い出せばよかったのに」
弥生「いやぁ、だって妊婦に無理させるわけにはいかないじゃん?引っ越し作業大変だし」
多世「…まったくモッチーは優しいんだから」
陽奈「私は実家だし、たよちゃんは寮だし、力になれなくてごめんねぇ」
弥生「ううん。あ、このことは3人だけの秘密ね!」
土田「何の話してんのー」
講義室に遅れてやってきた土田が話しかけてくる。
多世「女子だけの秘密ですー、男のツッチーには内緒ーっ」
土田「たよちゃんだって男じゃん!」
多世「おだまりっ!」土田のほっぺを引っ張る
土田「いでででっ」
弥生(早く家見つけないと)

○不動産本社、副社長室
コンコン、ノックする芳樹の手。
宏樹「どうぞ」声のみ
ドアを開け入る芳樹。
芳樹「失礼します」
デスクに進む。
芳樹「副社長、本日のご予定ですが…」
デスクに座る宏樹の正面からの姿。

芳樹「…以上です」
宏樹「分かった、ありがとう」
宏樹をじっと見る芳樹。
宏樹「…どうした?」
芳樹「あのさ、ほんとに例の女子大生泊めてんの?」
宏樹「あぁ、そうだけど?」
芳樹「どう考えてもまずいだろ!?羽瀬川不動産の副社長が女子大生と住んでるとかアウトだから!」前のめり
宏樹「別に未成年でもないし、次の家が見つかるまでの期間限定だし、何の問題もないだろう。俺なりの人助けだよ」ニコッ
芳樹「はぁー…。まだその子に言ってないんだろ?兄貴が副社長だって」
宏樹「…そのうち伝えるよ」
呆れている芳樹。

○夜、宏樹のマンション
バイト帰りの弥生がエレベーターのボタンを押す。
弥生(結局家賃も要らないって言われて、居候状態になりそう。それによく知らない男の人の家に泊まるってやばいよね。たよちゃんが手出されても知らないよって言ってたけど、宏樹さんがそんなことするわけない。というか宏樹さん優しい雰囲気だし、良い意味で雄み感じないんだよねぇ)エレベーター内

玄関を進み廊下を歩く
弥生(あ、宏樹さん帰ってるんだ)
リビングの明かり。ドアを開ける。
弥生「ただいま帰りました…」
シャワーを浴びた後の上半身裸の宏樹の姿、シックスパック。髪を下ろしていて、タオルで髪拭いている。水が滴れ色気ある雰囲気。
弥生(!?!?)
「すみませんっ…!」顔赤くし
急いでドアを閉め、廊下に座り込む。
弥生(前言撤回!めちゃくちゃ雄なんですけどーっ!!)